第一章──特殊国防艦隊、発足
プロローグ
八月某日、往時の鎮守府の面影を色濃く残す横須賀の赤煉瓦、その重厚な鉄門に新たな表札が掛けられた。まだ金メッキの輝きの眩しい真新しいそれには、筆文字を模した書体で『日本国特殊国防艦隊』と銘打たれている。そしてその先の港には見慣れぬ大型艦が何隻か停泊していた。
否、見慣れないということはないはずなのだ。年配者なら直にその目に焼き付けた機会もあろう、その
──浮かべる城ぞ、頼みなる。
そこに在るのは、超弩級戦艦十二隻、堂々たるその威容だったのだから。
そのやや後方には、戦艦に比肩する程大きな艦から 艨艟らしい猛々しさを感じさせない小さな艦までが、計八隻、舳先を並べて泊まっていた。彼らの共通点は、片側に寄った艦橋や起伏のない甲板、紛れもない航空母艦だ。
そして港内でも水深の浅いところには、戦艦とは比べるまでもなく小さいがそれでも頼もしい姿をした鋼鉄の小山……巡洋艦や駆逐艦が静かに錨を下ろしていた。
── 浮かべる城ぞ、日ノ本の…御國の御代も護るべし。
かつて聯合艦隊として太平洋狭しと馳せた艦々が、今再びこの世に姿を顕していた。
【続】
うたかた艨艟譚 青海⚓︎ @Oumi_sakuramochimochi
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