断章「幕間と、未来と、作戦会議」 3
ふふっ、と彼女は笑う。
「いいのいいの、それで。でもね、
ユカリちゃんが何回か
ユズちゃんは本能的に敵だって認識してるからわかるとして、セーシローくんはユズちゃんを殺されてるから容赦しないわけだし。私はそもそも、手加減する気もないしね。イクトくんもけっこうキレてたけど、もうちょっと威力を出して。ユカリちゃんの目の前で戦うことに抵抗があるのは理解するけど、ユカリちゃんの心を守るのは後回し。ミユキちゃんでさえユカリちゃんのことで怒ってるんだから、
清史郎を除いて、三人が言葉に詰まってしまう。ゆかりを助けるための刹那、もっとも短い時間で虚人を圧倒するのはユズだ。その次が意外にも清史郎である。治癒能力に特化している清史郎が、その威力を攻撃にすべて振った結果として、ユズに匹敵する速度で虚人をゆかりのもとから遠ざけているのだ。
あえて清史郎は言わないし、いまだにユズの両耳を
ゆかりが絶望し、何度も立ち上がる姿を見ればなにも思わないわけはないのだ。そしてあまり感情の起伏が見えないユズが、怒りが持続しない彼女があの刹那に現れた途端に瞬間的に怒りを思い出して虚人を一気に叩きのめすのは、さぞ
ほんの一瞬、針を通すよりも細い細いその時間でユズは敵を圧倒するが、あっという間に再生されてしまう。あと一歩で、『届かない』。
そしていっときの、その
「あの厄介な再生能力がある限り、わたしでも倒しきれない」
ブツン、と音声と映像がそこで途切れた。
*
「少しずつ、複数人数になってきたよね!」
意気込んで言う晴夏に、妹の深雪も
しかし悠一は渋い顔をしている。
「でも、能力数値が高い一号や八号が、毎回一人だ。分断されてる……」
「よほどこっちの脅しが効いてるのか、大人しくしてると思ったけど……私たちじゃなくてイクトくんだけに標的を絞ってるくせに、変なことしてるからでしょ?」
「本来なら、こんなに
「七号、おまえは今まで通りすればいい。合流をすればいいんだろ、わたしと清史郎が」
絶望と悲壮が
「清史郎、できるな?」
「もー、無茶ばっかり言う……。できるよ、できる。やってみせる」
「よし。あと必要なことはなんだ? 言ってみろ、四号」
「え……二人が見た魔法陣てのが、やっぱりなにか関係してると思う。再生能力があんなに強力なのもおかしいし、やっぱりあれは何かの装置じゃないかなって思う、けど」
「……装置か。じゃあ壊せばいいんだな?」
あっさりと言うので、さすがに清史郎を除いた全員が
「いちごう、目が……」
「わたしがダメでも、清史郎がいる。必ずその魔法陣とやらを破壊してやる」
「でもユズちゃん、ほんとにできるとは……」
「わたしができると言っている。やると言っている。だから、やってみせる。なにか文句があるのか」
静かに言うユズは、片手に持つ日本刀に目を落とす。
「どんな小賢しいことをしているのかわたしにはわからん。四号、引き続き、分析しろ。五号はなるべくダメージを与えろ。
二号と三号は、六号の生存を優先させろ。清史郎はわたしほどとは言わないが、戦えるように準備しろ」
有無を言わせない空気に、ひりつく。全員が
「わたしと清史郎が同時に出現できるのは、ほぼ皆無だ。だから、それができた時、そこで虚人を
一人も欠けるな。全員、出せる力を、出し尽くせ。やり過ぎと思うくらいでいい。――――やれ」
絶対的な命令に、身体の奥が
「できるできないじゃない。できるように、なれ。いいな?」
じゃあ。
「全員、
ぶつん、とそこですべての音、すべての色が消えた。
*
虚人が異世界の魔術師というのならば、そこに理屈やなにかの式が存在する。それはまるで言葉の文法のように、手順がある。
この世界の者は、だれも、真実という意味で、「魔法」を理解することはできない。「魔力」が何なのかわかることはない。
魔法と魔術の違いがわからないように、決して、理解はできない。
できることは、精度を上げることだけ。適当に勝てていたからこんなことになった。警戒心がなかったわけではないのに、単純に押し負けた。
相手がなにを
敵はこの世界を手に入れようとしているわけではない。だが、明らかに害を与えている。虚獣も放っておけば完全に人的被害を出す。そして、過去、どのような操者がいたかなど、関係はない。
その時の虚人がどんな存在だったのかも、わからない。知る必要はない。
過去と戦っているわけではない。
『現在』の我々が、
敵は知ることはないだろう。自分のほうが有利と信じて疑わない
大義名分をもらったじゃないか。たとえ自身の為だとしても、それを使えばいい。私利私欲であろうとも、それが世界を救うことに
そして、正義のミカタであり、ヒーローであるならば。
「『仲間』の危機を、見て見ぬふりはしないだろうな」
目の前の、七号の
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