断章「幕間と、未来と、作戦会議」
断章「幕間と、未来と、作戦会議」 1
「
ユズの言葉に全員が、室内がしん、と静まり返る。
「ユズさん……いくらなんでも言葉が足りないよ」
さすがに
「
「あれは脱皮じゃないだろ!」
大真面目に言うリーダーに、悠一が頭を
「だが、七号の
「…………」
無言で青くなって
「ユズさん、脱皮したら七号の身体は残らないよ」
「それもそうか……。七号、ぐちゃぐちゃに踏み潰されたんだろ?」
「一号、ちょっとマジで黙って……」
吐きそう、と続けながら三号こと
うーん、と五号こと、
「そもそも私たち、なんであんな簡単に負けたのかって話じゃない~? イクトくんはとっくに死んでたとしてもさ~、弱すぎない? ユズちゃんと相討ちとか、ほら、私たちみんな見てないから知らないし」
「わーっ! やめてやめて! ユズさんが死ぬとか考えたくないっ!」
顔を両手で
「八号があんだけ頑張ったのに駄目だったしな。しかし、虚人って
「あのね! そういうのできないようにされてから、拷問されてるんだよ! こっちはみんなを助けるために必死だったのにひどいよ!」
「おまえが助けたいの、一号だけだろっ!」
「ユズさんは最優先だけど、みんなも助けないとユズさんが死んじゃうじゃないか!」
「脳みそ腐ってんのか! この
「だれが色欲魔だ! 僕が僕の奥さん助けようとしたってべつにいいだろ!」
「まだ結婚してないだろっ! どういう頭の構造してるんだ!」
ぎゃいぎゃい言い合いをする二人を、郁人が止めようとしているがなかなかそれができない。仲いいなぁと
「愛されてるね~。ユズちゃん、やっぱりセーシローくんと結婚するの?」
「約束したからな」
「相変わらず反応うっす~。あー、萌えが足りない~」
「脱線しまくってる……。そんなに時間ないんだから、早く相談しようよ。時間の隙間ってやつ、少ないし。そもそも『ここ』って、一号と八号が最初に出会った時間のすぐ後くらい、だっけ?」
「そう。私が虚人を見つけた時間より前。でもあのひと、何回もみんなのこときずつけるから、大嫌い」
「深雪~! にいちゃんが守れなくてごめんな……!」
ひしっと妹にしがみつくが、二号こと深雪は、そんな兄を見ただけだ。
「私は一番最初に死んじゃうし、みんなみたいに痛い思いはしてないもの。みんなが必死に戦ってるのに」
「いいのいいの。みんな、ミユキちゃんより大人なんだから。率先して戦うのは当然だし~。それに、男どもはどいつもこいつも、武器が遠距離用ばっかりだしね~」
早霧の明るい声の中に
「好きで遠距離用じゃない!」
「完全に適合してるものじゃないと出せないだろ!?」
「セーシローくんとイクトくんは素直に
「ひっ」
にたっと笑う早霧に、晴夏と悠一が小さく悲鳴を
「いい加減にしろ。この時間もすぐ終わる。悪ふざけをする
「まあ確かに? でもほんと、あんなに簡単に負けるとか信じられないから、なにか仕掛けがあったんじゃないかって思うわけよ。一対一ならわかるけど、私たちは七人いた。それなのに、ユズちゃん以外の攻撃が歯が立たないっていうのはおかしいもん。
だって、私の打撃が効かなくて、ユズちゃんのが当たるとか、そもそもおかしいじゃない? 殴る出力は、ユズちゃんより私のほうが高いのに。しかも、ユズちゃんと相討ちになったくせにすぐに再生してるとか……いくら魔力の
「それはオレも思った。こっちの武器や攻撃方法を把握しているとしても、あっさりやられ過ぎた。ほぼ不意打ちみたいなものだったが、威力がありすぎてこっちが死んだって感じだな。
法則というか、確実に殺せる相手は先に始末してる感じがする。二号、三号はだいたい最初にやられる。八号は順番が前後するけど、一号を
そこまで一気に
「そうか……。六号に精神的ダメージを与えるために手法を変えてるんだ。八号の拷問された死体を見た時、六号は状態がかなりヤバかった。オレたちみたいに怒りじゃなくて、現実を拒絶しようとしてたからな。だから何度か八号を拷問する。八号が標的になってるのは、たぶん、一号と六号を同時に揺さぶりたいっていうのがあるんだろう。まあうちのリーダーは、恋人が死んだくらいじゃ
視線を受けて、郁人が
「何度か身体が残っている。そこに魔力を流し込んで……そ、その」
顔を赤らめる郁人の肩をぽん、と悠一が叩いた。わかってる、みなまで言うな。
「それ聞くと、ほんとクソヤローすぎて腹立つ~。ユカリちゃんをどうにかして殺したいわけね。でもそうならない。私たちがいるから」
それは
『誰かが必ず一人、現れる』。
繰り返して
しかしそれは起こらない出来事ゆえに、
もう何度も、あの場面、あの場所で、ゆかりを救うためだけに、全員、代わる代わる現れ、虚人を撃退していた。そうしなければ、ゆかりは殺されてしまうからだ。あの虚人だけは、こちらの世界の人間ではないからこそ、そこに、そう、魔力に蓄積された記録をずっと持っている。修正されるのは、ゆかりを助けるために自分たちが現れるあの刹那。
「この状態も、六号の魔力暴走? 暴発? みたいなものなんだろ。オレたちだって、虚人が余計なことするからこうして時々、集まれるわけだし。普通なら」
ブツン、とそこですべての音と映像が途切れた。
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