第7の章「虚人と、雨と、そして絶望」 4
「オネーサン」
ぼそぼそと声をかけられて、あたしは足を止めて振り向く。ビニール袋を片手に持つ彼は、
「この先のコンビニ、たむろしてるやつらいるから……その、気をつけてクダサイ」
「…………」
硬直してしまった。
変身しているのに、こうして自信が少しずつなくなる。
肩をつい、落としてしまいそうになったがハッとした。もろに見られたうえ、声までかけられた!
まずい……。一号は初めて変身した時、ネットに動画を挙げられている。いや、落ち着け。気をつけろなんてわざわざ言ってくれる人に、変なふうに見えているわけはない。普通の社会人を
早く去りたいだろうに、変な反応をしてしまったために彼は
「……
目を軽く見開く。なんで苗字を……そもそも変身した後の姿は、元の姿とは違うのに。それにここには初めて来た。知り合いがいるはずがない。
彼はそっと視線を
「スイマセン……なんか、知り合いに似てる気がして」
ナンパとかじゃないんで……と、ぼそぼそ
は、として視線をあげる。
能力的に難しいかもしれないが、足止めくらいはできると踏んで来たのだが……そこまで大きくない。これなら頑張れば……いい練習台になりそう!
「なんだ、アレ……」
能力を発動させるために瞳に力を込めていた時に聞こえた声に、思わず視線を向ける。彼は虚獣のほうを見上げている。この人、見えてる……!
「あ、あの!」
「?」
「あとでお話があるので、ここで待っててもらっていいですか! え、えっと、あたし、
「…………いいケド」
「よ、良かった……。あの、じゃあちょっと行ってくるので」
「…………」
彼が小さく
足止めをしていると五号が駆けつけてくれて、その虚獣を倒すことはできた。だけど、緊張しっぱなしだったせいで途中で変身を解く羽目になった。帰りのぶんの力は残しておかなければいけないので情けなくなりながらも元の姿に戻って、五号を案内する。
さっきの彼はあたしが「お待たせしました」と言って駆け寄ると、少しだけ目を細めた。
五号からの説明を黙って聞いたあと、彼は勧誘にしばらく押し黙っていたけれど、ちらりとこちらを見てから小さく
五号が帰ったあと、改めてお礼を言う。
「ありがとう。こ、怖くないので。それにみんなは強いですから、心配しなくてもいいです」
「…………タメで」
「え?」
「同い年だし……タメ口でいい」
「同い年?」
小首を
「ぃや……立花、だろ。同じ小学校だった……んだけど、
「…………」
「おれ……小学校卒業して引っ越したから今ココに住んでンだけど……。立花?」
「憶えてなくてごめんなさい……」
「…………いいヨ、五年も前だし……。でも、ま…………元気そうで、安心した」
「?」
「ぇ、と…………あー……気ィつけて帰って」
自分が勧誘したというのに、自分のことで手一杯で彼になにが起こっていたか気づくことはなかった。私生活ではずっと仲の悪い両親の
必死過ぎて、まわりが見えなくなっていた。だから。
彼だった肉体が、無慈悲に踏み
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