第7の章「虚人と、雨と、そして絶望」 3
ゼンマイを巻けば、また音楽が
奇跡は起きない。
そんなもの、ありはしない。
奇跡と「呼ぶ」モノは、結局は、ソレが過去になった時、振り返った時に『奇跡と認証してもおかしくない』と思うようなものでなければならない。だから、未来にそれは起こらない。過去にすでに起こった出来事にのみ、奇跡という名称は与えられる。
そして、あの悲惨な日がやってくる。凄惨な死が仲間を襲う日がやってくる。
ただ、そこに変化が起きたことに。
その運命に抗う選択をした人物が姿を
運命のレールが音をたてて
太陽の光が差し込む。
あたしは、なにが起こっているのかわからなかった。
「さあ、リベンジだ」
わけのわからないことを言う『彼女』を、涙でぐしゃぐしゃになった顔で見つめることしかできなかった。
それは奇跡なんて
その後の記憶がすっぽり抜けた。まるで『なにも起こっていない』ように、運命は進む。あたしはまた同じ道を歩いている。同じ手順で、同じように殺し、同じように破壊し、同じように貯め込んだ魔力を肉体の消滅の瞬間に解放する。
ぐるりとなにかを一周するような、危険な感覚。
そしてまた秒針の音がして、始まる。すべてが一から始まる。
また、仲間が死に、絶望にひれ伏す日に向けて歩き出す。なんとも愚かなことだ。しかし、あたしは「知らない」。知ることはできない。
五号までのメンバーに会った日。仲間になった日。そして、七号が入って来た日。八号が加わった日。
まったく同じことを繰り返す。抜け出せない蟻地獄のような道行き。待ち受けるものを知らずに、笑いあう
時々不敵に笑って、みんなを安心させる一号。
みんなを
妹思いの元気で活発な三号。
趣味は読書だと言っていた四号。
二次元を愛する、頼れる最年長の五号。
寡黙で打ち解けることができなかった七号。
無自覚な色気を振り
彼らの会話のやり取りを聞いて、一緒に笑うのがとても楽しくて、明日もまた頑張ろうと思う。たった数人の、共通の秘密のある仲間たち。
どんな境遇なのか、どこに住んでいるのか全員きちんと知ることはない。べつに必要のない情報だった。同じ
そして全員、異世界の物質のせいで常に命を危険にさらされていた者たち。あたしは、進路希望の紙を適当に書いて提出したほど、未来になにかを求めてはいなかった。
打ち込めるなにかがあるわけでもなく、夢があるわけでもない。恋愛に憧れはしたけれど、世間の夫婦を見ていると家庭円満であるという印象はあまり受けない。恋愛と結婚は違うというが、将来どうなるかなど、この時点ではわかりはしなかったのだから。
本当に愚かしい。繰り返す日々の中で、以前の記憶があればと思うのは未来での出来事だ。それは自分が死と引き換えに時間に干渉した瞬間。
相手は明らかに少しずつ、少しずつ記憶の持ち越しをしていたのに。
だが、
仲間が死に、一人になってからが自分と虚人の戦いが始まる。敗北はしないが、勝利することもない。なんとかあたしを殺そうとする敵と、絶対に死なない運命で
未熟なあたしでは勝つことができない。同時に、仲間たちも勝てないほど、あの虚人は圧倒的だった。
同じ演目を延々と繰り返しているようなものだ。観客などいないのに、
舞台の上から退場するのはあたしと虚人以外の存在だ。幕が閉じるその時まで、そして再び幕があがる時まで延々と演目を続けなければならない。
幕が上がれば再び仲間たちが舞台にあがってくる。それを必死に止めたいのに、それができない。
仲間になってしばらくして、七号が加わった日がやって来る。本当に無口で、反応が薄かったのがとても印象的だった。その時の自分は、周りのみんなが強くて落ち込んでいたこともあった。七号はコンビニ帰りだった。夜道を歩いていた時に、慌てて横を走り抜けていたあたしはまったく周囲が見えていなかった。夜間の戦闘のほうが得意ではあったが、よく迷子になっていた。その時もうろうろしながら、虚獣の姿を探していた。目印のように、虚獣は発光しているわけではない。夜間では
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