第6の章「痴女と、彼と、一生の恋」 4
「ユズさんと結婚を前提にお付き合いしたい、です。お、お互い、その、高校生なのにって思うけど、ほ、本気だし……!」
「あー……。まあ、それで気が済むならいいけど」
「僕は本気なのに! 投げやりだよ、ユズさん!」
「あ、いや、恋愛経験ないからよくわからなくて……。まあいいよ。じゃあ今日からお付き合いっての、始めるか」
「ま、待ってユズさん! そんな簡単に決めたらダメだよ!」
「どっちなんだよ、おまえ」
「だ、だって僕、ユズさんの全部が欲しいから……ほかの男に目移りしたらなんかひどいことしそうで……! よく考えて!」
「両手で顔隠して言うことではないのでは」
「こんなこと言うの初めてなんだって……!」
「ふーん。まあ、勇気を出してくれたのか。なんかわたしができることがあるなら、遠慮なく言え」
「か、考えておくね!」
「ふっ。まあ有効期限ないから、お好きにどうぞ」
アハハと思わず笑い声を出された。滅多に見せない笑顔を目にして、相当参ってしまったのは自覚があった。
「ユズさん、を、僕にください」
返事など待たずに、どうしたっけ……。
こんなやり取りしたっけ?
「大事にします。一生愛します。ユズさんしか欲しくない。ユズさんがいればいい」
そして。
「まあいいけど」
「ユズさん! ちゃんと考えて! い、今のプ、プロポーズ、だからね」
「ははっ、泣きながら必死に言われたら、まあいいかなって」
「もう……お。お願い、思いついた」
「ん?」
「ユズさん、僕を――――絶対助けないでね」
は、とした。このやり取り、いつしたっけ……?
今の関係は、なし崩しみたいに始まった。あとで告白は正式にしたが、こんな会話、ではなかった気がする。
(勝手に記憶を
そんなに四六時中彼女のこをばかり考えてるとか、明らかにおかしいだろ!
「ユズさんがかっこいいからっていうのもあるけど、好みっていうのが最初の印象で」
本当の最初の印象は痴女だったけど。
「ゆ、ユズさんは前向いて。恥ずかしいから」
「…………」
「今さらって顔してもダメ!」
「じゃあおまえも揉むのやめろ」
「それだよ! ユズさん、そうやってちゃんと僕を
「叱られる前にやめろ」
優しくユズさんの顔を前に向かせる。こっちは見ないで欲しい。
背後から彼女を下心なくぎゅう、ともう一度抱きしめた。
「ユズさんを好きになったから、好きなんだよ。理由は僕にもわからないから」
「お、おい……なんでそんながっちりホールドするんだ……」
「ユズさんに伝われ! ぼ、僕の愛!」
「……はいはい。わかったよ」
「ユズさん、僕、頑張るからね。絶対にユズさんの助けになれるように頑張る」
「…………頑張らなくていい」
声のトーンが明らかに変わった。どんな表情をしているのか、さっぱり予想がつかない。あまりにも、なんだか苦痛を我慢しているような響きが、あったから。
「今でも充分だ。おまえは、頑張るな」
「どうして? 僕も
「……病気が悪化するだろ」
なにか隠したような、
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