第5の章「敵と、日常と、非日常」
第5の章「敵と、日常と、非日常」 1
一年という
ナナサンには悪いけど、いちごうとよんごうさんの怒り方が真逆なので、見ているとちょっと笑いかけてしまう。いちごうは、ナナサンを思いっきり踏んづけたり、殴っている。最初はこういう暴力を振るう人なんだって、怖かったけど……そういうことをしているのはナナサンにだけだった。よんごうさんは、すっごく冷たい目でくどくどと説教をしていて、正座をさせられているナナサンがしょんぼりしていて、とってもおかしい。
六年生になっても、身体はなかなか言うことをきいてくれない。だから、友達らしいものができなかった。
ごごうさんは、のんびりと会話に入らずにいつも持参するスケッチブックに何か
だから、まさかナナサンの世界から、また別の人がやってくるなんていうのは、全員びっくりした。しかも、そのひとは、この世界がどうなってもいいとか、言い出した。
世界に
でも、言ってみれば、私たちは、特殊な病気にかかっている状態なのだ。その病気の進行を早くすると言われて、嬉しい人間はいないと思う。しにたいなら、違うかもしれないけど。
少なくとも、
その男の人は、私が
だから。
いつもは街に
虚獣はただひたすらに
細い細い
いちごうが、その頭を
その男の人は、
私が反応できないことに、そのひとは、ちょっと笑っていた。でも、だって、私はお兄ちゃんにさがってろって言われて……。
「全員さがれ!」
いちごうの掛け声に、全員が一斉に身を引いた。お兄ちゃんが私を守るように前に立つ。まって……私だって戦えるよ……変身すれば、病気だって、かからない。それに、大人の私は、強い。いちごうほどじゃなくても、つよいはず。
一番近い位置にいるのはいちごうだった。よんごうさんが、ナナサンのほうを
「おまえは動くな!」
いちごうは姿勢を正して、あれ、いつの間に唇が切れてるの? 血を乱暴に
「自己紹介もせずに攻撃して悪かったな、くそったれ」
じこしょうかいじゃないよ、とお兄ちゃんが肩を落としながら言っている。でも、私はいいと思った。だって、あの男の人、いきなり現れて、こっちは
「これが
ナナサンへ向けてそう言う男の態度に、いちごうがこめかみに
「おいてめぇ……なにを優越感に
じりじりといちごうが怒りを
「一番の欠陥品だな」
瞬間、いちごうの姿が目で追える速度ではなくなった。男の眼前に現れると、その頭を両手で
「これだけ濃度があるなら、こちらも強力な魔術が使える。
びき、といちごうの中でなにか危険な音が聞こえた気がした。ぐん、といちごうが身を引いてからその手に警棒のようなものを取り出す。あれはいちごうの武器の一つだ。無造作に振り上げて男の頭を狙うが、それがガァン、という音を響かせて
けれども、いちごうの手は
「さっきと違うものだな……。跳ね返す力じゃない……じゃあ、これはどうだ」
ずん、と一号の足が地面に少し沈んだ。そして、警棒を握る手に血管が浮いている。う、うわっ、力づくで叩き壊す気だ!
まさに力と力のぶつけ合いだった。余裕そうな男の
「おぉぉおおおおおおらあああああぁぁっっ!」
勢いをつけてもう一度振り上げて、降ろす。その動作を目で追うけれども。
いちごうが、叩きつけた力は先ほどのものより比較にならなかった。男の足元の地面がひび割れ、いちごうと共に
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