第9話 過ちを堕としたい

人が過ちを犯す3つの要素というのご存じだろうか。


その「機会」、「動機」、そして「正当性」の3つが揃ったとき人は過ちを犯してしまうという。


人が過ちを犯すのは道徳的欠陥のみでなく、環境的要因も複影響していることを指摘している定義である。




楳本出灰むめもといずるは不舞との1対1の状況を作り出すことに成功したものの、手足を縛られ依然として圧倒的不利な局面を強いられていた。

不舞の取り巻き達がゾロゾロと体育倉庫を聖園みそのを連れて、出て行くのをも見ながら思考する。


「結構固く、縛りやがって...]

聞こえないように悪態をつく俺は体育倉庫にあったスポーツ系部活動が使用するラダーに似た縄で手足を縛られ、体は思うように動かない。体の前で腕を縛られニュースでみる犯罪者のような格好になってしまっている。

交渉はこの状況を作り出すために既に出し尽くした。

ここで状況をひっくり返すことができるのはただ一つ。


―――相手の「


状況が生み出す圧倒的優位な場面においてのみ生まれる隙。

慢心し油断しろ不覚を取れ不舞。


お前は今、だ。


不舞ふまいさん、体育倉庫に隠れている方がまだいるなんてことはありませんよね?」


「えぇ、これでここには私とあなたしかいません。」


なんてことない確認。そうここにはお前と俺しかいない。

体育倉庫で男女が二人きりの状況だ。恋愛漫画なんかでよくあるシチュエーションじゃないか。

先程までの大人数がいた喧噪は無くなり、ひどく静かな空間が二人のみの空間をさらに意識させる。

ここで何が起ころうと外の人間にはわからない。考えろ不舞この状況をそして意識しろ。

状況は作り出したぞ。


「すみません、この体勢だと体が痛くて話しづらくって。」


そう言いながら俺はゆっくりと体育倉庫にあるマットに向かって縛られた状態で歩き出す。

取り巻き達に加えられた暴力で乱れた衣服を、バレないように縛られた手で第二ボタンを開けることでさらに乱れさせ、腕を捲って力を入れ、前腕の血管を浮かび上がらせる。

喉仏が見えるように顔の位置をずらして首を強調する。

第二ボタンがないことで首と鎖骨は姿勢を前にすることで視界に入る。

あからさまにするな。さりげなく、気づくか気づかないの割合を極限まで意識しろ。

男女の構造的な違いを不舞に見せてやれ。


不舞は俺の胸元を見て、嗜虐的な笑みを浮かべたのを俺は逃さなかっった。



「不舞さん、体育倉庫の外にいた俺が聞こえたぐらいです。話も少し長い内容ですのでこちらに。」



女子お嬢様の割合が圧倒的に多いこの学園で男子生徒に触れる機会は滅多にないはずだ。

いくら男子生徒が弱い立場にある存在とはいえ、年ごろの女の子なら異性に興味がないはずがない。

派閥への勧誘に加え、他派閥への牽制など幹部補佐としての役割は重い。

そのストレスは計り知れないだろう。

聖園はストレスの捌け口としてはさぞおもしろくなかっただろう?



―――現在、不舞にはある。


密閉された空間で拘束された従順な異性を好きにできる状況が――。


幹部補佐の重圧からすこしでも解放されたいという欲が――。



「俺は不舞さんにすべて話したいと思っています。それは不舞さんのやり方に共感を持ったからなんです。派閥のためにはこういった荒事も必要だった。そしてそれを誰かが必ずやらなければならなかった。」



ならあとは―――



「不舞さんは決して――――間違ってない。」



ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。



「え、えぇ。そこまで理解して頂けてるなら、は、話次第ではあなたの身柄は琴原派閥で面倒を見ても構いませんよ。」


そう言って髪を耳にかけながら、俺のもとに歩み寄ってくる不舞の顔は赤い。



「それで楳本さんその話というの―――――――がはッッ・・・!!?」」



少し屈んで俺との距離を詰めようとした不舞を縛られた両手の平で締め上げる。





「あんたは間違えたんだよ。不舞さん。」


「だ、だれ..か..」


「手足を拘束したとはいえ、不用意に近づくべきじゃなかった。距離をとって尋問だけして俺から情報を聞き出せばよかったんだ。」


「こん..なタダですま..さない」


「そうだな、どうせ俺の人生終わるんだ。なら...一人くらい殺しておこうか?」

グッと指に力を込める。ジタバタと暴れる不舞を床に押さえつける。


「ッッッッ!?」


「なぁ?今から死ぬってのはどんな気分だ?」


「んんんッッッッ!?」

さらに首に指を食い込ませて力を加える。不舞は涙を垂れ流し、死にたくないとばかりに首を左右に振ろうとする。


「いいか、お前はすでに俺の手の中なんだ。死にたくなければ何も考えず俺の言うとおりにしろ。」

涙にと鼻水を流しながら苦しそうに頷く、不舞は懇願するかのように俺を見ている。


「俺と俺の派閥に手を出すな。今日生かしてもらったことを決して忘れるな。」


そうればお前を――


「派閥なんてくだらないもの全部考えなくてよくしてやる」


それだけ言うと不舞は気絶した。

これで不舞は落とした(物理)。

さすがに殺しなんてしないが、脅しにしてもさすがにやりすぎたか?


色々とグチャグチャになっている不舞の惨状を見て俺は少しだけ反省した。

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2024年6月28日 17:10

「学園美女四天王は必ず俺が堕とす!!!」 きりきりまい @oideyasuhannari

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