第6話 バナナが隠語じゃなくても堕としたい

「うるせぇ、ブスぶっとばすぞ。」


一瞬の静寂の後に、琴原ことはら派閥と思われる女子生徒たちはたちまち顔を赤くし騒ぎたてている。

「この世に舞い降りた白きエンジェル」かと思われた少女は、小さな体躯で心底めんどくさそうな顔しながら悪態をついている。

こいつエンジェルなんかじゃない!ただのクソガキだ!でも、一回「私は天使なんかじゃないわ」ってクーデレみたいな顔しながら言ってほしい。

俺あのアニメ好きだったんだよ!


「琴原派閥の勧誘を蹴ることがどういうことかわかってるの?」

怒りでわなわなと震えるこぶしを握り締めながら、リーダー格の女生徒はそれでも冷静に努めようとする。


「知らない。ブタの仲良しごっこに付き合う道理はない。」

あんたねぇと勧誘グループの女子生徒たちは今にも沸騰したやかんのように怒り出す。

今にも一触即発の雰囲気の中、あらぬところから声が掛かる。


「こんにちわ、聖園みそのさん。」

どこからともなく現れた女子生徒は、妖艶な雰囲気を醸し出したまま仲裁に入るような形で二人に割って入った。

聖園みそのはまたうっとしいのが増えたと、あからさまにげんなりとしている。


「わたくしは琴原ことはら派閥現幹部補佐の1年不舞寧々ふまいねねと申します。」

すみません不舞ふまいさんこいつはとリーダー格だった女子が言いかけるの手で制止すると。


聖園みそのさん、以前から勧誘が少しばかりしつこかったとはいえその発言には気を付けた方がよろしいかと。」

にっこりと首をかしげながら言う不舞という生徒はどこか生徒会長とは違った仄暗さがある。


「派閥を敵に回すのはあなたとしても...―――ベちゃっ!」



ベちゃっ?

話の途中の不舞さんの顔にバナナの皮が顔右半分に張り付いた。

なんで顔にバナナの皮がついてるかと言えばあの女が投げつけたからだ。


「長いし、しつこい。」

そういってスタスタと立ち去る。

慌てて取り巻きたちが不舞からバナナの皮を引っぺがすが、聖園みそのを見る不舞の顔から笑みは消えていた。



「とんでもねぇな、あいつ。」

すごいものを見てしまったとただただ感心する。

残ったは琴原派閥の女子達と不舞はまだ何か話し込んでいる。気付かれなようにその場を後にすると昼休みがすでに終わろうとしていた。

あんなやつ絶対派閥に入らないないだろうな。入れたとこでトラブルの予感しかしない。ていうか入る前からトラブル起こしてたし。


昼休みのいざこざを目撃してから授業は終わり放課後になってから、俺はクラス関係なく派閥について聞き取りを行っていた。

情報としては俺が以前から持っていたものとさほど変わりはないが、最近になって1年生が主体の琴原ことはら派閥が勢力を伸ばしているという。

1年生が主体の琴原派閥だったが、ここ1週間で2年生や3年生の人員も増やしているという。琴原派閥のトップである琴原麗香ことはられいかは本人の温厚な性格から派閥の勢力を伸ばすことに積極的ではなかったが、新しく加入した1年生を皮切りに勢力が急激に伸びているらしい。


その1年生の名前は不舞寧々ふまいねね

今日の昼休みの聖園とのいざこざの際に、途中から来た仄暗い女子生徒。

バナナ女か。

口に出そうになって慌ててとキョロキョロと周りを見るが誰もいない。あぶないあぶない。失礼な事を考えていると誰が

見ているかわからんからな。バナナさんもとい不舞の手腕は見事で1年主体の琴原派閥に上級生を加入させたのも彼女の説得あってこそだったという。

あんまり人徳が豊かな人間には見えなかったけどなぁ。

なんて思っていると..。


聖園と不舞のグループが話し込んでいる姿が見えた。昼休みと違ったのは不舞のグループは昼休みよりも人数が多く上級生が混じっていること。

そのせいで聖園は強く出れない。いや正確には、聖園は昼休みの時と同じく強い態度でいるが、人数の圧がそれをもろともしていないといった方が正しい。

ゾロゾロと集団は校舎の外まで移動していく。


「不舞さんもベタだな。」


予想していなかったわけではない。不舞の態度から報復は当然であると考えていたし、派閥がどこまで行うのかにも興味はあった。

だが、思ったよりも行動が早い。派閥に対しての認識を改めつつこっそりと付いていく。

それにしてもバナナ投げつけられたくらいでそんなにしなくても。

と思いながら考えてみたが、いや怒って当然かとも思った。



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お読み頂きありがとうございます!

この後すぐに続きの終盤を予約投稿してますのでお時間あればぜひ!!!

きりきりまい


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