第4話 温度差ありすぎると堕としたい
「...派閥ですか?」
「現在、青藍坂学園では4大派閥が存在していますが、この状況は学校側にとっても私としても好ましくないです。本来生徒会は学園における法といっても過言ではないです。派閥と生徒の枠組みを管理し学園の秩序を守るのが生徒会の役割ですが、現在生徒会は4大派閥の1つであると認識されています。」
「派閥自体の影響力が強まっているということですか...?」
もともと人数の少ない前条原派閥兼生徒会とはいえ、それと肩を並べるほど派閥は大きくなっているのか。
「民主主義における『数』とは絶対的な力です。大きな人数の有するコミュニティとはそれだけで高い評価を得られる。人が集まる魅力が有り、それを組織として維持できていることは、力の証明に他なりません。そもそも青藍坂学園における女子生徒主体の派閥社会は前時代的で古いです。そして男子生徒には何の関係もなく、女社会で肩身を狭く平凡と学園を過ごしていくしかない。」
でしょう?なんて目だ。こっち考えはお見通しと言わんばかりに一瞥してくる。ぐぬぬ。
「それが俺が派閥を作ることと、どう関係が?」
「邪魔なんですよ、彼女ら」
体がゾクリとするほどの冷たい彼女の声。
にっこりとほほ笑む彼女の声音は自分の歩いている道に大きなどかしにくい荷物に対する感想のようだった。
思ったより柔和で優しい生徒会長の印象はここで回れ右の180度ターンした。もうこのまま帰りたい。ねぇ帰っていい?
「―――――君が派閥を作って全派閥を君の派閥に取り込んでください。」
!? そう来たか。なんとなく彼女の求める理想の形が見えてきた。
「1つ、派閥の力が大きくなりすぎている。2つ、共学化したにも関わらず男子生徒は不当な待遇が現状。これらを改善する策は派閥の解体に他なりませんが、現存する巨大派閥の解体を同列の派閥が命じればそれは―――――」
―――――――――戦争です。
生徒会室の空気が一気に凍る。空気は寒く張りつめているのに生徒会長の瞳は戦火が灯っている。
「なーんてことになれば、学園の秩序はめちゃくちゃです。なので楳本さんには期待したいんです」
先程の空気を一瞬で切り替えて柔らかな空気で笑うが目は笑ってない。この人本気で戦争する気じゃないのか。なんて思いながら説明を促すと。
――生徒会派閥vs
「この構図は、本来あるべき一般的な学園の構図と何ら変わりはありません。楳本さんが他の派閥をすべて取り込むことができれば楳本派閥=全校生徒ととらえることができます。vsはやりすぎですが、生徒会に対して全校生徒は学園内の秩序を求めるというあるべき構図が出来上がるのです。」
「そして俺が生徒会に公認で楳本派閥はを発足することで男子の派閥介入を公的に認めることができるってか」
「その通りです」
「やりませんよ、そんなこと」
「できないとは言わないんですね」
「やらないなんだから、できないと同義でしょう」
「いいえ、既にあなたは4大派閥のトップすべてに手を出そうとした。そのあなたがやらないわけがない。できないわけがない。そしてこれはお願いではなく強制です。4大派閥に手を出そうとしたことがどれだけ重いかあなたはまだ理解していない。」
「あと私への告白が4番目の最後だったことも...」
やっぱり若い子がいいんだ!なんて言いながらほっぺをプクゥーと膨らませている生徒会長だがさっきとの温度差で風引きそうになる。
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