第66話

 前書き


 どうもお盆の最終日ということで、まだまだ休みが続く人もいるかもしれませんが、一応、お盆に関連したS Sを和風ファンタジーなら入れた方がいいかと書いてみました。


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 江戸の喧騒から離れ、俺は故郷の美波藩へと戻ってきた。


 お盆の時期だ。この季節は、先祖や故人たちが帰ってくると言われている。俺も例外ではなく、先祖たちの霊を迎えるために里帰りをしている。


 朝早く、藩の山間にある墓地へと足を運んだ。蝉の声が鳴り響く中、俺は祖父母や両親が眠る墓前に立ち、花と酒を添えて手を合わせる。


 墓石に手を置くと、冷たさが心地よい。風が吹き抜け、心が少しだけ穏やかになるのを感じた。


「父上、母上。江戸での務めはまだまだ続いています。どうか、俺の背を押してくれ」


 静かに祈りを捧げた後、俺は墓地の掃除を始めた。先祖たちの霊が帰ってくると信じ、丁寧に掃除をする。墓石を一つ一つ磨き、雑草を取り除く。やがて、墓地全体が清らかな空気に包まれていくのがわかる。


 その後、俺は屋敷に戻った。すると、蘭姫様が縁側に座り、庭を眺めていた。


「鷹。墓参りは終わったか?」


 蘭姫様が優しく問いかけてくる。彼女はいつも俺を気遣ってくださる。


「はい、蘭姫様。先祖たちの墓も綺麗にしてきました。これで霊たちも心安らかに帰ってこれるでしょう」


 蘭姫様は微笑み、俺の隣に腰を下ろした。縁側に座り、庭を眺める。風に乗って、かすかな花の香りが漂ってくる。


「蘭姫様もご一緒に墓参りに行かれますか?」


 彼女は少し考え込んでから頷いた。


「そうね、行きましょうか。妾も祖父母様のお墓にお参りしたいのじゃ!」


 俺は蘭姫様をお連れして、再び墓地へと向かった。彼女と共に歩く道は、いつもと違った温かみがある。蝉の鳴き声が響く中、俺たちは静かに歩を進めた。


 墓前に着くと、蘭姫様は静かに手を合わせ、祈りを捧げた。彼女の真剣な表情を見ると、改めて彼女の強さと優しさを感じる。


「蘭姫様、霊たちはお喜びでしょう」

「そう願いたいわね。鷹、妾たちがこうして過ごせるのも、先祖たちのおかげじゃ」


 蘭姫様の言葉に、俺は深く頷いた。先祖たちへの感謝を胸に抱きながら、俺たちは帰り道を歩いた。


 その夜、屋敷の縁側で二人で送り盆のために火を焚いた。


 茶を飲みながら、月明かりが庭を優しく照らし、風が静かに吹き抜けていく。江戸では感じられない。この静寂と安らぎに包まれて、俺たちはしばしの間、心を休めることができた。


「鷹、こうして一緒に過ごすのは、久しぶりに心が穏やかになるわね」

「はい、蘭姫様。これからもこの時間を大切にしたいと思います」


 お盆という季節の中、俺たちは先祖たちとの繋がりを感じながら、穏やかな時間を共有した。江戸に戻れば再び激務が待っているが、この一時の安らぎが、俺にとって何よりの力となる。


「それで、鷹よ。お主が江戸に行ってから半年が過ぎた。どうなのじゃ?」

「そうですね。一年もしないうちに手柄をご報告させてもらいます」

「ほうぅ! 大きく出たのぅ」

「はい。ですが、私も蘭姫様のご活躍を聞いております」


 蘭姫様は美波藩の者たちを奮起させて、百鬼夜行に対抗したと報告を受けている。


 新しくやってきた代官は、厳かに代官として責務を果たしているが、美波藩に住む者たちは農民も算術が行えるので、年貢を納める査定はやりにくそうにしているようだ。


「ふむ! 妾とて美波藩の領主が娘じゃ。これぐらいはして当たり前のことなのじゃ」


 ご立派になられたののですね。


 小説の中では、断罪される悪女として描かれる蘭姫様が、俺の手を離れて立派に成長をなされた。


 そして、俺の想いを伝えてくださった。


 俺は庭に降りて、蘭姫様の前で膝を折る。


「桜木鷹之丞、必ずや江戸にて手柄を立てて、蘭姫様に相応しい男になりましょうぞ」


 俺の誓いに対して、蘭姫様が立ち上がる。


「鷹よ。お主が妾をここまで育てたのじゃ。責任は取れよ」

「必ずや」

 

 俺はそう言って10歳になられた蘭姫様のギュッと頭を抱きしめられた。


 夏空の下で、再び誓いを改め、里帰りを終える。


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 あとがき


 どうも作者のイコです。


 私はお盆が終わりですが、皆様は、まだ休みですか? ゆっくりとお身体と精神をご自愛いただければと思います。


 どうぞ今後もよろしくお願いします!

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