第44話

《side 桜木鷹之丞》


 美波藩を後にした俺は新之助をお供に街道を進む。


 ただ、今回のお供は新之助だけではない。

 小狸の忍びとして、弥一が護衛につけてくれたのは、ミタの兄であるゲンタだった。


 江戸では忍びとして活躍してもらうつもりだ。


 旅装束に身を包んだ俺たちは、街道を進んでいく。


 俺は赤い旅衣をまとい、肩には旅籠を背負っている。

 足には高級草鞋を履いていて、新之助は黒い旅装束で腰には刀を差している。

 ゲンタは人間の姿に変化し、一般的と同じ旅人の格好をしていた。


 俺たちは一頭の馬を連れており、その馬には荷物が乗せられている。


「鷹之丞様、宿場まではまだ少し距離があります。少し休憩を取りましょうか?」

「そうだな。少し休んでいこう」


 俺たちは街道の脇にある木陰に腰を下ろした。


「兄さんたち籠はどうだい?」


 休憩していると籠が声をかけてくるが、あまり柄が良さそうではない四人組に俺たちはすぐに遠慮させてもらった。


「いや、まだ疲れていないからいいよ」

「そうかい? 疲れたいつでも声をかけてくれよ」


 そう言って他にも街道を進む者に声をかけていた。


「ゲンタ、何か変わったことはあるか?」


 妖怪であるゲンタは、妖力を使って周辺を探ることに長けている。


「いえ、特に怪しい動きはありません。ですが、用心するに越したことはありません」


 休憩を取っていると、街道を行き交う旅人や商人の姿が見える。

 俺たちもその一部であり、特別な注意を引くことはないように見えるが、何が起こるかわからないのが旅だ。


 旅を続ける中で、先ほどの籠を担いだ四人組が乗せた客と揉めている姿が見えた。

 どうやらボッタクリを働いているようだ。


「払えねぇってどういうことだ!!」


 怒鳴り声に、これもまた街道の名物であると見送る。

 

 最初の宿場にたどり着いたのは夕方だった。


「鷹之丞様、ここで一夜を明かしましょう」

「ああ、そうしよう」


 宿場に入ると、賑わいと喧騒が広がっていた。

 旅人たちが集まり、飲み食いし、宿泊の手続きをしている。

 俺たちもその一員として、宿を取ることにした。


 寝る場所は、大部屋で他人と共に寝ることになる。


 部屋に入って少し休んでいると、突然外から騒ぎ声が聞こえてきた。


「助けてくれ! 盗まれた!」


 慌てて外に出ると、旅人が盗賊に襲われて財布を奪われたという騒ぎだった。

 新之助とゲンタが素早く対応し、俺も加わる。


「財布を盗まれました! 犯人はあの方向に逃げました!」


 女性の声に、俺たちは指示された方向に向かって走り出した。

 ゲンタが変化して敏捷性を発揮し、犯人の行方を追う。


「鷹之丞様、あちらです!」


 新之助が指差した方向には、逃げる盗賊の姿があった。

 俺たちは素早く追跡し、ついに犯人を取り押さえることができた。


「おとなしくしろ。逃げることはできない」

「くそっ、こんなところで捕まるなんて!」


 盗賊を取り押さえ、盗まれた財布を取り戻すことができた。


 宿場に戻ると、他の旅人が置き引きにあった話をしていた。

 俺たちも道具を見たが、馬に踏まれた人間がいたので、どうやら狙われていたのは俺たちも同じだったようだ。


「油断ができないな」

「ええ、危険ばかりです」

「本当にありがとうございました! おかげで助かりました」

「いや、大したことはしていない。皆が無事で何よりだ」


 俺たちは盗まれた財布を女性に返して、三人で交代で見張りをしながら休むことにした。


♢ 


 翌日、再び街道に出発する。旅を続ける中で、次の宿場までの道中でまた新たな出来事が待ち受けていた。


「鷹之丞様、前方に人が倒れています」

「なんだ?」


 俺たちは急いで駆け寄り、倒れている男を助け起こした。

 男は疲れ果てた様子で、水を求めていた。


「ありがとうございます…助かりました…」

「一体どうしたのですか?」

「実は…」


 男はスリの被害に遭い、所持金をすべて奪われてしまったという。

 俺たちは男を助け、食事を提供し、彼の話を聞いた。


「この近くでスリが横行しているようだ。注意が必要だ」


 俺たちは更なる警戒を強めながら、旅を続けた。


 その夜は野宿することになり、焚き火を囲んで休息を取ることにした。


「新之助、ゲンタ、明日も気を引き締めて進もう」

「はい、鷹之丞様」

「承知しました」


 夜の静けさの中で、俺たちは焚き火の温かさを感じながら眠りについた。


「鷹之丞様、おきてください。あの森の中に妖怪が潜んでいるようです」

「ゲンタ、よく気づいたな。妖怪か…気をつけて進もう」


 俺たちは慎重に森の中を進む。

 突然木々の間から妖怪が現れ、俺たちに襲いかかってきた。


「気をつけろ! 攻撃だ!」


 俺は刀を抜き、妖怪に立ち向かう。

 新之助もゲンタもそれぞれの武器で応戦し、妖怪を撃退することに成功した。


「ふう、危なかった…」

「妖怪は一筋縄ではいきませんね」

「そうだな。しかし、無事に切り抜けられてよかった」


 俺たちは再び街道に戻り、次の宿場へと向かった。

 道中の困難を乗り越えながら、少しずつ江戸に近づいていく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 本日お昼の12時から、カクヨムネクストで新連載が開始します。

 1話目は無料で読めるので、良ければ見ていただけると嬉しく思います。


 どうぞ、よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る