第26話 アカウント、ユーザ

 最低、二枚の画像をアップロードする必要がある。

 正面の顔、横の顔。

 さらに全身写真をアップロードすると、現実に近い体形も再現可能となる、必須ではない。さらに、多数の角度から自身の写真をアップロードすれば、その人物の再現度は高くなる、これも必須ではない。

 仮想世界提供サービス、セカイでは、画像を使用することで、セカイ内でユーザが使用する仮想身体を、現実のユーザの分身として、使用できる。

 とうぜん、現実の自身を仮想身体にする必要はなかった。無料の仮想身体エディタもある。有料もあり、仮想身体オーダーを生業とする者もいる、そちらへ外注すれば、セカイで使える理想の身体も入手は難しくない。

 ユーザとは別人の画像情報で仮想身体を作成する者もいるが、それは発覚した場合、違反となる。アカウントの即時削除される。もっとも、罰則だけで根絶されていない状況だった。違法な仮想身体登録は後を絶たない。

 問題を内在している。それでも、セカイへ利用者は途絶えることはない。新規登録者数は他の同種のサービスに比べて、ゆるやかな伸びではあるものの、増え続けている。

 カミが登場の直後は、アカウント数は減少したものの、その後、すぐにカミがいないセカイの同数に戻り、そして、わずかに越えた。

 全サービスを、無生物による運用を発表された段階で、セカイは、特例のユーザのアカウントを勧告なしで削除した。削除後、漠然と『ルール違反をした、アカウントを削除しました』と、一文を発表したのみだった。

 削除されたアカウントの中には、セカイでも有名なユーザもいた。そのユーザのセカイごと、削除された。

 問題も、抗議も、議論も起こったものの、起こっただけで、時間が過ぎ、そして、騒ぎは忘れられていった。ほとんどのユーザは、これまで通りのセカイを利用でき、なにも困ることがなかった。

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