Ep.9 -スコアアタック:04-

「着いたぞ、最深層の転送ポートだ」

「…ポートボスが居ないですね」

 僕たちの目の前にあるのは起動済みの転送ポートのみ。ポートボスの姿は無かった。

「…まぁ、多分だがこの先にダンジョンボスがいるからだろうな」

「なるほど…」

 渚は銃のリロードを、僕は白刃取りで焼けた掌を回復薬で回復する。アドラスさんとシルヴァさんも各々準備をして、準備を終えた時、背後から声が聞こえた。

「ダンジョンボスを倒すの、僕も参加していい?」

 ジュノアさんが僕にそう声をかける。

「…どういう風の吹き回しですか?」

 そう言いながら、訝しむような視線をジュノアさんに向ける。

「いや、特にこれと言って理由は無いし、そんなに警戒される筋合いは………あったね」

「ありますよ」

 奇襲を二回もされて警戒されない事はないだろう。

「…まあでも、一目見たいんだよね。ダンジョンボスがどんな奴なのか。それに、君がどう攻略するのか」

「…大半は後者目当てですよね」

「あはは、バレた?でも正直、好きなんだよね君の事。僕こんなでも女だから」

「………はぁ、最後のカミングアウトは聞かなかったことにしておきます」

 チーミングに関してはと言うと、ジュノアさん曰く『ルールに書いてないから大丈夫』とのこと。

 …チーミングはルールじゃなくてマナーの話だと思うんだけど…。

「…まぁ、分かりましたよ」

「大丈夫、僕も役には立てると思うから。君の事を好きな異性としては、出来るだけ君に嫌われるのは避けたいしね」

 …既に2回くらい奇襲されてるのは何と言うかなぁ…。

「…っていうか、あの二人はどうしたんですか?」

「ん?ああ、スコアを稼いでもらってるよ。大丈夫、道具みたいにき使ってる訳じゃないから」

「…そうですか」

 そして、ジュノアさんとの話をそこまでに、僕達は最深層、ダンジョンボスの所へと向かった。

 転送ポートで最深層に移動すると、大きなシャッターの様なドアが僕たちの視界に入る。

「…この向こうに、ダンジョンボスが居るんですね…」

 そのドアに近付くと、ドアが上へと持ち上がり始める。

 遮蔽物や柱もない、広い空間。その中央にダンジョンボスが立っていた。

 モデルマンストロンゲスト・マルチプル。それがダンジョンボスの名前のようだ。アーミー、エリートに続いてストロンゲスト…。

 体力の表記は10,000と表記されていた。

「体力1万…!?」

 シルヴァさんがそう驚きの声を漏らす。

「…まずは、小手調べだ!」

 そう言ってCEEAPシープ軽機関銃を構えるアドラスさん。

 ―――だが、CEEAPシープ軽機関銃からは一発も弾が発砲される事はなく、アドラスさんが赤い破片となって砕け散る。

「…あの動き…」

「…僕に、似てる」

 似ているというよりも、僕の動きの丸写しだ。

 僕のこのダンジョン内での動きを全部学習してる…?

「UQMまで―――」

 そう言いかけて、防御したはずのジュノアさんさえも、切り傷の様なダメージエフェクトが全身に無数に付く。

「っ!ミズ!避けて!」

「ひゃっ!―――あっ!?」

 防御した渚は、攻撃こそ防げたものの、高速の攻撃に衝撃を逃がし切れずに体制を崩す。

 UQMを発動して渚の元へと全速力で駆けて、突き飛ばす。

 渚に当たるはずの攻撃は僕のナイフで受け止められる。

「―――ぐっ!」

 受け止めたその一突きでさえも、高速で衝撃が強く、壁まで飛ばされてしまうほどだった。

 壁を蹴り、反撃に転じる。

「―――今度はジュノアさんか!」

 腹部をついたはずだった攻撃をひらりと横に躱し、手首を蹴ってナイフを僕の手から強制的にナイフを落とす。

 僕やジュノアさんより、何倍も速い…!

「ケイ、くん…!」

 ジュノアさんが投げたスモークによって、一時的にストロンゲスト・マルチプルの視界を遮断する。

「…ジュノアさん、ありがとうございます!」

「…ケイくん…君にならこれを扱えると思う」

 そう言って、ジュノアさんはインベントリから装備品を僕に手渡す。

「…これは?」

「単純に機動力を上げるだけの外套だよ。君に、愛を込めたプレゼントってやつだ、ケイくん」

 愛のプレゼント云々は置いておいて、僕はジュノアさんからそれを受け取り、装備する。

〖装備詳細:ファントム・ウォラップ〗

 効果:装備者のAGI敏捷INS瞬発を1.5倍、UQM発動時、同ステータスさらに2倍


 …確かに、これなら。

「ありがとうございます、ジュノアさん」

「…お兄ちゃん、これも」

 渚からベーシックナイフを投げ渡される。

「…魅せて、ケイくん。君の完全攻略フルクリアを」

「お兄ちゃん、頑張って」

「…足手纏いかもしれませんが、私も精一杯手伝わせてもらいます。…親友の借りができたので」

 そう言って、シルヴァさんもスウィフトライフルとは別の拳銃を構える。

「…体力1万、削り切れますかね」

「…やろう、ケイさん」

「分かりました」

 UQMを発動して、ストロンゲスト・マルチプルを取り巻くスモークが晴れるのを待つ。

「…もうすぐだ、気を付けて」

 ジュノアさんのその言葉が放たれたタイミングで、僕とシルヴァさんは武器を構え直す。

 スモークの煙が薄くなり始めるのと同時に、僕とシルヴァさんはストロンゲスト・マルチプルへと一直線に走り出す―――。


――――――――

作者's つぶやき:ジュノアさんが防御してもダメージエフェクトまみれになるのに、渚さんは普通に防御できるんですよね。多分、兄の動きに似ているから、いつも見てきているのもあって、反射的に防御できたのだと思いますが。

というか、初期装備って言っておきながらナノ・シールドとか使ってるのはどうなんでしょうかね?

――――――――

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