Ep.8 -スコアアタック:03-

「…この先が転送ポートだ。多分、ポートボスがいるから気を付けろよ」

「分かりました」

「…じゃあ、開きますね」

 非稼働状態の転送ポートの前に、ナノ・シールドを構えたアーミー・マルチプルと、エリート・コンバットが待ち構えていた。

「ミズ、準備は良い?」

「うん」

「じゃあ、行くよ」

 僕と渚が同時に走り出す。

 アーミー・マルチプルがシールドを構えるが、僕と渚はそれを踏み台にしてエリート・コンバットへと攻撃を仕掛ける。

 エリート・コンバットは右手を差し出し、ナノ・シールドよりも遥かに速いスピードで光の盾を生成し、僕と渚の攻撃を防ぐ。

 後から遅れて、光の盾を置き換えるように実体の盾が展開されていく。

「…さっきのってマナシールド?」

「多分、そうだと思う」

 展開時間の遅さをマナシールドでカバーしてるみたいだ。マナシールドもまだ展開しているらしく、実体の盾の後ろにまだ蒼白く光ってるマナシールドが見える。

 盾を少し小さくしたエリート・コンバットが剣を構えると、刀身が蒼白い光に包まれる。そして、それが次第に白、黄色、赤と移っていって、刀身の根元から剣先に向かって炎が走り、それを纏う。

 UQMを発動して、エリート・コンバットと同時に地面を蹴る。僕よりも高く飛び上がったエリート・コンバットは僕に炎を纏う剣を振り下ろす―――。

 ―――刹那、僕はナイフを下に投げて地面に突き刺し、エリート・コンバットが振り下ろした炎を纏う刀身の側面を両手で挟んだ。

 掌が赤いダメージエフェクトに置き換わり、炎によってHP体力が少しずつ削れていく。

「おいおい…まじかよ…白刃取りって…」

「…やはり、ケイさんにはどう足掻いても勝てそうにないですね」

「当たり前だよ。だって、お兄ちゃん強いもん」

 誇らしげにしている渚を横目に、エリート・コンバットを蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされたエリート・コンバットは見事に姿勢を制御して着地し、すぐさま反撃に転じる。刀身を地面と平行にして僕へと切りかかろうとする。

 僕はそれが当たる前に真下の地面に投げて刺したナイフを抜き、エリート・コンバットの懐に潜り込んでエリート・コンバットの前頸部にナイフを突き刺して、そのまま上に斬り上げる。

 エリート・コンバットが赤い破片になって砕け散るのを確認した後、後ろに目を遣ると、渚たちがアーミー・マルチプルを倒していた。

「お兄ちゃん、ドロップ品って何かある?」

「ん?え~っと…」

 僕はそう言いながらインベントリを開いてドロップ品を確認する。

 ナノ・エスカッションというドロップ品が目に入る。

「ナノ・エスカッション?何それ」

「多分だけど…エリート・コンバットの使ってた盾じゃないかな。…ほら」

 インベントリから取り出して展開してみる。マナシールドが展開されてから、それを置き換えるように実体盾が展開されていく。

「…ドロップ品の確認はもう大丈夫ですか?」

「あ、はい」

「よし。んじゃ、深層に行くぞ。ここからは敵もうんと強くなる。気を抜いてると足元掬われるぞ」

「はい」

 そして、僕達は転送ポートで深層へと向かう。



「あ、そうだケイさん」

「はい?」

「回復薬、使ってください」

 そう言ってシルヴァさんが回復薬を差し出す。

「いや、いいですよ。それよりも、最深層のダンジョンボスに備えて出来るだけ使わないほうが良いと思いますし」

「…そういやぁ、ここのダンジョンボスと戦ったことはねえな」

「そうなんですか?」

「ああ。基本、深層まで攻略したら地上に帰るんだ。完全攻略フルクリアした奴なんか見た事ねえ」

「そうなんですね」

 それくらい倒すのが難しいか、或いは最深層までの道のりが厳しいか、そのどちらもか。

 どれにせよ、一回はダンジョンボスを見てみたい。

「…と」

 シルヴァさんが立ち止まる。僕たちの視線の先には起動済みの転送ポート。

 …先を誰かに越されてる?

「…ありゃ、ダミーのポートだな。入ったら敵の居る空間に飛ばされて全身蜂の巣だ」

「…先を越されたわけではないんですね」

「当たり前だ。そもそも、初層でそこそこスコア稼げるんだからよほどのモノ好きじゃねぇとこんな所まで来ねぇな」

「そうなんですね」

 そうして、僕達はまた歩き出したシルヴァさんに着いていく。

 この階層には敵は殆どいない。その代わり、出てくる敵が全て強力らしい。

「っと、居るな」

 そう言ってアドラスさんが立ち止まり、CEEAPシープ軽機関銃を構える。

 シルヴァさんもそれに合わせてスウィフトライフルを構える。

「…行くぞ」

「はい」

 2人が一斉に柱から飛び出し、息ピッタリの連携でエリート・アサルトを倒す。

「すごいですね、二人とも。息ピッタリの連携です」

「私たちも負けてられないね、お兄ちゃん!」

「そうだね」

「あはは…まあ、アドラスとは親友ですから」

「ってか、兄妹の二人が言うか?それ」

 まあ、確かにそうかもしれない。でも、二人の連携も息ピッタリだった

 シルヴァさんが突撃して、出来るだけ相手をその場に留めながらアドラスさんの射線を開け、CEEAPシープ軽機関銃を撃ち込む。

「…さて、もうちょっとで最深層の転送ポートだ。気を引き締めろよ」

「「はい」」

 そうして、僕達は最深層の転送ポート前に向かう。


――――――――

作者's つぶやき:次回か次々回くらいにはスコアアタックが終わると思います。

GSMワールドにストーリー性があるのかはまだ未定なんですが、多分気ままにダンジョンとかを攻略するだけだと思います。その間にストーリーなりなんなり挟んでいけたらなと思います。

――――――――

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