Ep.7 -スコアアタック:02-

「…中層には私達が最速みたいですね」

「そうみたいですね」

 中層にプレイヤーの姿は無く、アーミー系統の敵が軒並みアーミー・マルチプルへと置き換えられている。

「…さて、じゃあ4人で突撃してやれるまでやってみましょうか」

「分かりました。…ミズ」

「うん。準備OKだよ、お兄ちゃん」

「行きますよ」

 そう言ってシルヴァさんはグレネードを投げる。そして、グレネードが爆発するのと同時に、柱の陰から飛び出す。

「おらおらおら!!!」

 そう言いながらCEEAPシープ軽機関銃を乱れ撃つアドラスさん。グレネードが爆発した地点を警戒していたアーミー・マルチプル達の背後からの奇襲。

 反応はワンテンポ遅れたものの、向こうもすぐに体制を整える。連携能力が変わらずに性能が高くなっているのが恐ろしい。

 ―――そうだ。

「アドラスさん!、これを使ってください!」

 僕はそう言って、UQMを発動し、さっき転送ポート前で倒したアーミー・マルチプルからドロップしたナノ・シールドをアドラスさんの前で展開して、即席の防楯を作る。

「ありがとよ!オラオラオラァ!!!」

 そうしてアドラスさんがある程度CEEAPシープを撃ち終わった後、僕はナノ・シールドをインベントリに収納する。

「…こりゃ、生きてるやつはいないか?」

「みたいです――――」

 そう言いかけたシルヴァさんの後ろに黒い影を認める。UQMを切っていなかった僕はシルヴァさんの所に急いで向かい、ナイフで受け止める。

「…お、また会ったね、君」

「…貴方、さっきの」

 僕との鍔迫り合いを止め、バックステップしてナイフを構え直すプレイヤー。

「…一応、自己紹介しておこう。ジュノア、それが僕の名前だよ」

「…ケイです」

「…ケイくんか、じゃあ、容赦しないよ!」

 そう言うと、ジュノアさんは一瞬にして僕の懐に突っ込んでくる。

 間一髪、インベントリ操作が間に合い、取り出したナノ・シールドをどうにか展開して、ジュノアさんの腕を上へと跳ね除ける。

 浅く食い込んだナイフが、腕を跳ね除けられて上に斬り広げられ、右胸から右肩へと、赤いダメージエフェクトが広がっていく。

「くっ―――」

「やっぱり、やるね、君!」

 ジュノアさんの跳ね除けられた腕が持つナイフは、何時の間にか逆手に握られていて、僕へと振り下ろされる―――。

 ―――僕の右肩をかすめるようにして飛んでくるCEEAPシープ軽機関銃。投げたのは勿論、アドラスさん。

「…それ、投げられるんですか…」

「おうよ」

 飛んできたCEEAPシープ軽機関銃はジュノアさんに当たり、CEEAPシープに押されて後ろへと飛ばされる。

「…はは、すごいや、君たち。でも気付いてないか、やっぱり」

 そう言って僕の後方を指差す。

 シルヴァさんと渚が、推定別動隊の2人に制圧されていた。

「君たちが今、投降すればあの二人を開放するよ。スモークの煙が収まる前に判断してね」

 そう言って、ジュノアさんは僕とアドラスさんの前にスモークグレネードを投げる。

「あぁ、そうそう。僕スモークの中でも見えるんだよね」

「…そうなんですか」

 僕はジュノアさんとは逆方向、渚たちの方へ向かう。

 UQMはもう効果切れ寸前。スモークの中から、別動隊に向かってナイフを投げる。そして、そのナイフは別動隊の一人に突き刺さった。

 渚はその間にフェルメティを持ち直して、僕が頭にナイフを投げて突き刺した方に向かってヘッドショットを3発叩き込む。そして、その後シルヴァさんの方に立っていたプレイヤーもヘッドショットを叩きこまれ、赤い破片となって砕け散る。

「…君ら二人、強すぎるでしょ」

「…そうですかね」

 丁度、そのタイミングでUQMがクールタイムに入る。

「…お兄ちゃん、使って」

 渚からナイフを受け取り、姿勢を低くする。

 左手のナイフを逆手に持ち直し、勢いを付けてジュノアさんの懐へと潜り込む。

 ジュノアさんはバックステップをして、僕はそれに追従するように前へと踏み込む。

「もらった―――なっ!?」

 僕が前に踏み出したタイミングでジュノアさんはナイフを振ったが、それは空を切った。

 ナノ・シールドをドラッグシュート代わりに、空気抵抗を発生させて急激に減速する。その後、ナノ・シールドを収納してもう一度前へ踏み込み、ジュノアさんの懐に潜り込んでナイフを突き刺す。胴体だからクリティカルではないけど。

 ナノ・シールドをもう一度展開し、アーミー・マルチプルがしたように先端を尖らせて、ジュノアさんの喉元に突き刺す。

「かはっ!―――」

 その間に左手に持っていたナイフ右手に持ち替えて、ジュノアさんの左顎下部に突き刺す。

 ―――ジュノアさんは赤い破片となって砕け散る。

「…はぁ」

「…良くやった、ケイ!」

「お兄ちゃん!」

「ケイさん、すごいです!」

「ありがとうございます。…っと、それじゃあ、深層の転送ポートに向かいましょうか」

「うん!行こ、お兄ちゃん!」

 アドラスさんとシルヴァさんはこのダンジョンに何回か来ているらしく、ダンジョンの構造も覚えているようなので、転送ポートへ最短距離で駆け抜けつつ、目に見える敵を全て倒しながら転送ポートを目指す。


――――――――

作者's つぶやき:ジュノアさん、名前が出るってことは、まあ今後も登場しますね。

次は深層へと向かいます。ちなみに、ジュノアさんはかなり強いんですけど、この人は元軍人なのでちゃんと強いです。まあ、私自身ミリタリーは浅めに好きなだけなので、軍の事に関して触れることはそんなに無いです。

――――――――

よろしければ、応援のハートマークと応援コメントをポチッと、よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る