Ep.10 -スコアアタック:05-

 スモークの中に見えるストロンゲスト・マルチプルのシルエットにめがけてナイフを突き出す。直前でそれに気付いたストロンゲスト・マルチプルがバックステップで回避するが、僕はそのスピードに追い付く。

「追い付い…たっ!」

 そう言って突き出すナイフは、ストロンゲスト・マルチプルがとっさに構えた両手に防御されたけど、それでもダメージは与えられた。

「ケイさん!射線を!」

 そのシルヴァさんの声を聴いて、右へと体をずらす。

「レジデュアルフラグメント!」

 そう言ってシルヴァさんの拳銃から放たれる弾丸は僕の胴体のすぐ横をスレスレに飛び、ストロンゲスト・マルチプルに当たる。

 着弾した地点に円状のダメージエフェクトが、そこから10方向くらいに筋状のダメージエフェクトが広がる。

「…これで20秒間は継続ダメージが入る筈です」

 そう言って構えていた拳銃を下ろしてスウィフトライフルに持ち替える。

 ストロンゲスト・マルチプルはUQMが切れたようで、さっきまでの様な機敏さは無く、高速で迫ったシルヴァさんの弾丸を避け切れなかったようだ。僕の動きを真似できるなら、弾丸を弾けば良いのに。

「そういえば、なんで拳銃なんですか?」

「あぁ、この拳銃、アビリティの威力を1.1倍するんですよ」

「なるほど」

 シルヴァさんから疑問の回答を貰ったところで、僕は再びストロンゲスト・マルチプルの懐へと飛び込む。

 ナイフを胴体に突き刺すが、体力の減りは少ない。継続的にダメージは入っているけど、まだ後7000ちょっとも残っている。

「…僕も、手伝うよ」

「ジュノアさん、大丈夫なんですか?」

「あれは、君の動きの強化版なんだろ?だったら僕…いや、私にもやらせてほしい。君の動きを学びたいんだ」

 回復薬で回復したのか、ジュノアさんにはダメージエフェクトは見当たらない。

「…じゃあ、私もやる」

「ミズ…」

「大丈夫、安心してお兄ちゃん。ヤバくなったら逃げるから」

 だったら良いんだけど…。

「じゃあ、私はタンクかな」

「僕とミズが攻撃を」

「じゃあ、私はアビリティを撃っておけば大丈夫ですかね」

 渚にナイフを返して、自身のナイフを逆手に構える。

「…行くよ、ミズ」

「うん。お兄ちゃん」

「ヘイト・ショット!」

 ジュノアさんの発砲と同時に、渚と走り出す。

「ボム・フラグメント!」

 ストロンゲスト・マルチプルへと放たれた二人の弾丸は、当たることなく避けられる。そして、ストロンゲスト・マルチプルはUQMを発動して、再び機敏な動きで今度はジュノアさんの方へと突撃していく。

「同じ動きに2回もやられるほど弱くはない―――!」

 そう言ってジュノアさんはストロンゲスト・マルチプルからの斬撃を宙返りで避ける。そして、着地際にスモークグレネードを投げる。

「…さぁ、君のコピー元ならスモーク中でも迷いなく戦闘ができたけど―――」

 ―――スモークの中から銃弾が一発。ジュノアさんの右頬を掠める。

「…これは…スモーク・アイ…!」

「まさか、ジュノアさんの動きもコピーして…!」

 スモークの耐性も…。いよいよ対抗手段が無くなってきた…。

「ボム・フラグメント―――!」

 ストロンゲスト・マルチプルがスモーク中から発砲した弾が、シルヴァさんのアビリティによって防がれる。

「…っ!」

 次は僕か…!

 僕に飛んできた弾を弾く。上へと軌道を帰られた弾丸は天井へとぶつかる。

 勢いよく地面を蹴り、スモークの中から微かに見えたマズルフラッシュの位置を頼りにストロンゲスト・マルチプルの予測地点へと向かう。

「…残念、相性が悪かったね、ダンジョンボス。ケイくんに銃弾は効かないよ。…君は虎の威を借る狐だ」

 そう言って一発、スモークの中に銃弾を撃ち込むジュノアさん。着弾した地点に散る火花で目星を付ける。

「どれほど虎に似せようが、狐は所詮、狐でしかないのさ」

 スモークの中に居るストロンゲスト・マルチプルの首を目掛けてナイフを突き立てる。

 ―――そして、ストロンゲスト・マルチプルは赤い破片となって砕け散る。

『ユーザーネーム、ケイがエレメンタリーダンジョンを完全攻略フルクリア。スコアアタックを終了します』



 スコアアタックが終わり、僕たちのパーティは無事に1位。ジュノアさんのパーティも、3人パーティ部門で無事に1位を獲ったみたいだ。

〖レベルアップ〗

【ケイ:Lv.15→Lv.23-Exp.40/340】

【ミズ:Lv.15→Lv.23-Exp.40/340】

〖アビリティ獲得〗

【ケイ:灭靁之燄オグニイェナ


「お兄ちゃん、そのアビリティって何?」

「…分かんない」

 …オグニイェナ…たしか何かの神話の火の神だったはず…。

「ちょっとだけ発動してみて、お兄ちゃん」

「分かった…灭靁之燄オグニイェナ

 灭靁之燄オグニイェナを発動すると、ナイフの刀身が炎とスパークに包まれる。

「…ケイくん、それ、ちょっとだけ触ってみてもいい?」

「良いですけど…気を付けてくださいね?」

「うん、わかってる」

 そう言って、僕のナイフの刀身に触れるジュノアさん。

「わっ―――!?」

 ジュノアさんがそう驚いた様な声を零して、刀身から手を離す。

「嘘…ちょっとだけ触れただけで体力8割持って行かれた…」

「大丈夫ですか?」

「回復薬はあるから大丈夫…。…そう言えばケイくん」

「はい?」

「フレンドになって無かったよね、なろ?」


――――――――

作者's つぶやき:次回、ジュノアさんがフレンドになります。

それはそうとして、終わりましたね、スコアアタック。初級ダンジョンだと言っておいてダンジョンボスの強さが異常なのってどうなんでしょうか。

アドラスさん曰く最深層までは余程のモノ好きじゃないと来ないらしいですが、なんというかフロムゲーの様な理不尽さが香りましたね。

――――――――

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