Ep.4 -ダンジョンへの下準備-

 モデルマンアーミー・アサルト三体の攻撃を躱しながら、的確に頭部へと銃弾を叩きこむ渚。

 僕が加勢しなくても、渚1人でモデルマンアーミー・アサルト三体を倒し切った。

「お兄ちゃん、見て!レベルアップしたよ!あと素材がドロップしてる!」

「良かったね、渚」

「えへへ~♪」

 渚の頭を撫でながら、渚が表示しているインベントリを見てみる。

「マナ励起チップ?」

「魔法剣とか、魔法銃とか、マナを使って撃ったり切ったりする武器の威力が上がるんだって。…あとは、装甲板かな」

「装備とかも作れるみたいだね。…作ってみる?」

「お兄ちゃんは?」

「僕は…今のところいいかな。ナイフで弾けるから」

「…お兄ちゃんとお揃いじゃないと嫌」

「…そっか」

「うん」

 僕はそう頷く渚の頭を撫でる。気持ちよさそうに、くすぐったそうに目を細め、僕の手に頭を擦り付ける。

「えへへ、お兄ちゃんのなでなで好き♡」

「…そうだ、ミズ」

 僕がそう言うと、周りをきょろきょろと見まわして、「今は渚で良いよ」と言ってくる。

「…渚」

「ん?なぁに、お兄ちゃん?」

「ダンジョン、行ってみる?」

「お兄ちゃんも、行くの?」

「まあ、そりゃ勿論」

「じゃあ、行く。お兄ちゃんと一緒に居たいから行く」

「そっか」

 まあ、ダンジョンに行く前に、リアルを色々済ましておかないと。

「渚、取り敢えず一旦ログアウトしよう。リアルでご飯とかお風呂とか済ましておかないと」

「うん。一緒に入ろ?」

「それは駄目」

「なんでぇ!入ろうよぉ!」

「渚も僕もそんな年じゃないの」

 そう言って潤んだ眼の渚の頭を撫でると、すぐに笑顔になって僕に抱き着いてくる。

 …単純だなぁ。

「…まあ、取り敢えずログアウトしようか」

「うん!」

 メニューを開いてログアウトを選択する。

 視界が真っ暗になる。瞼を開けると、自宅の白い天井が、GSMゴーグルのバイザー越しに見える。GSMゴーグルを外して、同時にログアウトしてきた渚と一緒に立ち上がる。

「…いつまでくっついてるの?」

「ん?ずーっと♪」

「そう。でも料理中は離れてよ?」

「分かってるよ。お兄ちゃんが怪我とか火傷とかしたら嫌だから」

 そう言う割には全然離れようとしてないんだけどなぁ…。まあ、いいや。キッチンに立ったら離れてくれるでしょ。

「じゃあ、そろそろご飯作るから離れてて」

「は~い」


 ■


 ご飯とお風呂を済ませた僕と渚は、再びGSMゴーグルを装着してGSMワールドにログインする。

「…ん~と、一応段階を踏んでいかないとダンジョンには入れないみたい」

 メニューのチュートリアルノートを見ながら渚にそう伝える。

「そうなの?」

「うん。一応あるみたい」

「どんなの?」

「レベル15からじゃないと入れないみたい」

「じゃあ、レベリング?」

「…そうなるかな」

 今、僕と渚のレベルは4。渚はさっきのモデルマンアーミー・アサルトとの戦闘でレベルが上がっていた。

「う~ん…」

 この辺りの敵だと、一体一体は倒すのが楽だけど、経験値は少ないし、何より数が多い。二対多は流石に分が悪い気もする。

「…ねえ、お兄ちゃん」

「ん?どうした渚」

「あれ、助けに行こう」

 そう言って渚の指が指す延長線上を見ると、プレイヤーが二人。20体程度のモデルマンアーミー・アサルトに囲まれていた。

「…行こうか」

「うん」

 渚の走るスピードに合わせて、僕は渚と並走してその人たちの所へと向かう。

 4対20、ちょっとはマシになるはずだ。

「どうする!もう回復薬も尽きたぞ!」

「僕の、まだ一本残ってるから使って!」

 そう言って銀髪の僕より少し背が高いプレイヤーが、もう一人のバンダナを巻いた方のプレイヤーに渡す。

「クッソ!避けるので精一杯で飲めねぇ!」

 僕は地面を蹴り、3m近く飛び上がり、モデルマンアーミー・アサルトの一体の頭頂部より少し後ろにベーシックナイフを突き刺す。

 突き刺さった辺りから電流が少し流れて、赤い破片となって砕け散る。

「ミズ!」

「うん!お兄ちゃん!」

 目で追うのがやっとのスピードの渚が発砲して、的確にモデルマンアーミー・アサルトの後頭部にヘッドショットを決める。

 モデルマンアーミー・アサルトの一体が僕にライフルを向け、発砲する。渚のフェルメティとは比べ物にならない程の連射音が鳴り響く。その中に混ざる金属音は、直撃コースに入る弾丸を僕が弾く音だ。

「ミズ!」

「おりゃっ!」

 渚が拳銃のグリップの底面でそのモデルマンアーミー・アサルトの後頭部を叩き、姿勢と照準を崩す。そして、僕がモデルマンアーミー・アサルトの首関節にナイフを突き刺し、近付いた勢いのままナイフを前にスライドさせる。

「す、すごい…」

「なんて連携だ…」

 そんな二人の感嘆を聞きつつ、渚が首関節を負傷したモデルマンアーミー・アサルトの後頭部にマガジン内の残弾を全て撃ち込む。

「…弾がもったいないよ、ミズ」

「確かに」

 最後のモデルマンアーミー・アサルトが赤い破片に砕け散る。

〖レベルアップ〗

【ケイ:Lv.4→Lv.9-Exp.70/110】

【ミズ:Lv.4→Lv.8-Exp.90/100】

〖アビリティ獲得〗

【ケイ:ウルトラ・クイックリー・ムーブメント】

 レベルアップと獲得アビリティをさっと確認して、僕と渚は二人に駆け寄る。

「大丈夫ですか?」


――――――――

作者's つぶやき:彼方くんのアビリティ、最早スピードを極めろって言ってますよね。あ、ステ振りとアビリティ詳細は次回。それと、この瀬戸兄妹が助けた二人は今後も出てきますので当然名前もあります。それもまた次回と言う事で。

あ、それといちいちウルトラ・クイックリー・ムーブメントなんて長ったらしいのでUQMってこれからは呼称します。

最初だけルビ振ります。

それとモデルマンアーミー・〇〇も呼称はアーミー・〇〇にしますね。

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