Ep.3 -渚の装備を見繕おう-

「…ベーシックナイフ、強いなぁ」

 初期装備のショルダーバッグからナイフそれを取り出しながらそんな事を呟く。

 破壊不可で、実体剣、魔法剣、どちらにも対応可能。

 ダメージはOFE攻撃依存の所もあるけど、クリティカルさえ入れば現状大体の敵は葬れる。

「ねね、お兄ちゃん」

「ん?どうした渚?」

「さっきさ、レベルアップって表示出なかった?」

「え?」

 そう思って、メニューからポップアップの確認を選択する。

「…本当だ」

〖レベルアップ〗

【ケイ:Lv.1→Lv.4-Exp.30/50】

【ミズ:Lv.1→Lv.3-Exp.20/40】

 画面にはそう表示される。

 自分のレベルアップ表示に指を近付けると、詳細が表示された。

〖レベルアップ詳細:ケイ〗

 HP体力:150/150

 MPマナ:200/200

 OFE攻撃:6/15

 DEF防御:5/15

 AGI敏捷:12/15

 INS瞬発:10/15

 LUC幸運:10/20


 ステータスポイント:2


 ステータスポイントの振り分けができるみたい。

 取り敢えず、今のところは攻撃と防御に振っておこう。

〖レベルアップ詳細:ケイ〗

 HP体力:150/150

 MPマナ:200/200

 OFE攻撃:7/15

 DEF防御:6/15

 AGI敏捷:12/15

 INS瞬発:10/15

 LUC幸運:10/20


 ステータスポイント:0


 こんな感じかな。振り直しもできるみたいだし、今は取り敢えずこれでいいや。

「お兄ちゃん、速く速く~!」

 ステ振りをしていたら、いつの間にか少し先へ行っていた渚を追いかける。

 少し遠くに見えていた、大きな城壁のような場所は、いつしか僕たちの目の前に。

 門は開いていて、滞りなくイングリットの中に入ることができた。

 門をくぐると、すぐに大通り。屋台が道の両端にズラリと並んでいる。防具、武器、アクセサリー、回復薬に、あとは普通に食料とか。

「あ、私ラムネ飲みたい!」

 そう言って屋台の一つに駆け寄っていく渚。さっきのクエストを達成したから、金銭的に余裕もあるし、折角だし僕も飲もうっと。

「まいど~」

 お金を払って、ラムネを2つ買って、片方を渚に渡す。

「はい、ミズ」

「ありがと、お兄ちゃん!」

 僕の事はケイって呼ばないんだ。まあ、今更そう呼ばれても慣れないから別に良いけど。

「ん?お兄ちゃん、飲まないの?」

「え?…あぁ、うん」

「…もう、ここはバーチャルなんだから、リアルの事を引き摺っても意味ないでしょ?」

「…分かってるけど」

 分かっているけど、分かっていても、無理なものは無理だ。

「…まあ、バーチャルなんだからさ。今だけ、私たちはケイとミズ。それで良いじゃん。ね?お兄ちゃん」

「…そうだね」

 ラムネを開栓して、瓶を傾けてラムネを口の中に流し込む。

「…美味しい」

「でしょ?」

 …なんで渚が誇らしげなんだろ。



 僕らは今、武器屋に来ている。なんでかと言うと、渚の装備を見繕うためだ。

「お~…なんか分からないけど凄い…」

 ライフルや拳銃、サブマシンガンに機関銃。ショーケースに並ぶ銃を興味津々に眺めている渚。

「ねえ、お兄ちゃん、私これが良い」

「ん?…Felmetiフェルメティ-20…」

 聞いたことが無い名前の拳銃だ。ゲームオリジナルの拳銃なのかな?

「すいません、これ試し打ちできますか?」

「はい、できますよ」

 そう言って店員さんに連れられ、試射場に到着した。

 パンッ!と言う銃声が、3秒間隔くらいに18回響く。

「どう?」

「…あんまり詳しいことは良く分からないけど…反動は少ない、かも?」

「そうなんだ。ちょっと貸してみて」

「うん」

 渚からフェルメティを受け取り、リロードして照準してみる。引き金を引いて発砲してみる。

 確かに、反動は少ない。それに、ブレも少ない。…ゲームだから、と言えばそれまでなのかも知れないけど。

「…じゃあ、これ買います」

「ありがとうございます。では、こちらに」

 それからついでに、フェルメティのマガジンを10個ほど買っておいた。今フェルメティに入っている弾薬を含めると、おおよそ198発撃てる計算になる。

「えへへ、ありがとうお兄ちゃん♡」

 拳銃片手に微笑む渚…まあ、バーチャルだから問題は無いんだろうけど…なんだかなあ…。

「…あ、そうだミズ」

「どうしたのお兄ちゃん?」

「折角だし、訓練してみない?」

「訓練?」

 そう言うわけで、イングリットを出てすぐにある平原に到着した。

「実戦訓練?」

「そうそう。僕は逃げ回るから、渚は2マガジンで僕に3発弾を当ててみて」

「…お兄ちゃんを傷つけるのは嫌、だよ…?」

 潤んだ眼で僕にそう言う渚。…じゃあ、どうしようか。

 そんな事を考えていると、草を掻き分ける音と、モーターが駆動する時特有の独特な機械音が背後から聞こえる。

 ベーシックナイフを逆手に構え、後ろを振り向く。視界に人型の機械が映る。

 モデルマンアーミー・アサルト。その人型の機械の上に、体力バーとともにそう表示されている。

「…お兄ちゃん、私のナイフ、使う?」

「いや、ミズが使って。ナイフと拳銃のコンボでやってみて」

 渚の練習に付き合ってもらおう。

「いくよ、お兄ちゃん!」


――――――――

作者's つぶやき:…まあ、どちらが圧勝するかはお察しだと思いますが…。あ、渚さんと彼方くんの戦闘方法を軽く紹介しておきましょうか。

渚さんはナイフを防御で攻撃を拳銃として使うことが多いですね。

彼方くんは…まぁ、はい。ナイフしかないので、拳銃を打てば直撃コースの弾だけを的確に弾いて真っ直ぐ向かってきますし、魔法を放てばマナブレードでこれまた弾かれるので、目を着けられたらご愁傷様…って感じですね。

――――――――

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