第20話 オールレビュー②

 和泉茉樹 「同調罪」https://kakuyomu.jp/works/16818093080699597820


 冒頭の引用「都市伝説として「同調罪」というものがある。


 俗に「誹謗中傷規制法」と呼ばれるいくつかの法律の施行から派生したものだと思われる。


 ネット上で不用意に悪意ある情報に同調することで、突然に警察を名乗る人物がやってきて拘束され、その後の行方が分からなくなるという。


 そのような事実はないから、全くの空想である。」ここから同調罪と呼ばれる罪がまことしやかに語られる世界。好きだったアイドルの婚約を前に自らも同調の罪に加担してしまう……。ある種のディストピア小説として読める。文明批評性のある一作だ。黒服の男たちが来るというのも生活維持省のようなイメージを感じさせて好印象だった。


 和泉茉樹「スクリーン」https://kakuyomu.jp/works/16818093080699489811


 引用「そう答えながら、私は目の前のスクランブルエッグのようなものを口へ運ぶ。


 卵の味など忘れてしまったはずだが、これは卵だ、という感覚がある。」人工の食事と恋人との会話、そこにリアルはあるのか? 冒頭の卵のようなものやウィンナーのようなものというフックが仕掛けられていて、謎めいた読み心地がある。構成の上手さで結末に至るまでぞわぞわとした感覚が忍び寄る。ネタバレ厳禁の作品だ。


 和泉茉樹「悪魔の見る夢」https://kakuyomu.jp/works/16818093080699646006


 引用「ドローンを操作し、目的地に五人一組で手榴弾を投下するVRゲームだ。VR空間は現実そのもののにようにリアルで、コントローラの反応も機敏である。」このゲームをプレイした後とんでもないことになってという話。前に和泉様の作品で「パートタイマーの戦場」という作品があったが、お話の構造はそれに似ている。似ているから悪いとは言わない。そういう作品が得意なのかもしれない。強いていえばイソロクやアイゼンハワーといった言葉が生み出す空気感があると言える。


 八田部壱乃介「時間追放の書」https://kakuyomu.jp/works/16818093080858994089


 引用「机の奥底に眠る日記を見つけ、ふと何気なく見返した日記には、一ページだけ意味のわからない箇所がある。




〝見返した日記には、一ページだけ意味のわからない箇所がある。〟


」さなコンのフリーに投稿された。小説内の独白が小説内に入れ子構造になって展開する。ここで注目すべきなのは小説内時間の進み方だろう。こうして独白が更新されることで時間軸はどこにあり、自分がいまどこにいるのかわからなくなる。そうした狙いを持って書かれたのなら凄い。

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