第6話 ブックガイド②「スマートな悪 技術と暴力について」
第二回は戸谷洋志「スマートな悪 技術と暴力について」です。SFにおいて技術というモチーフは切っても切り離せないものであるがゆえに、こうした技術に関する本も視野に入れておきたいですよね。
この本はスマートであるということをその語義から探っていき、歴史上でさまざまな事例をもとにスマートであるということを例示的に考えていくものです。
発端は国の掲げるスマートシティに関する提言書でした。そこからスマートであることを読み解きをする、そういう筋立てになっています。たとえばスマートの語源である「smeortan」の語義は「痛み」であり、痛みという特性故にその人を外界からシャットアウトすると読みかえていくわけです。
スマートなシステムを構築した際にどのような事例が待ち構えているのか、ここで衝撃的なのはナチス・ドイツのアイヒマン裁判を例に取ることでしょう。
アイヒマンは冷酷でユダヤ人を憎んでいたという事実があれば、もっと事はわかりやすかったのですが、事実はそうではありません。アイヒマンはただユダヤ人を輸送するシステムを構築しただけだと主張していたのです。
現代もコストパフォーマンスやタイムパフォーマンスなどそうした視線で物事を見る機会が多いですが、そうしたシステムによった見方を成すことで、あなたのなかにも小さなアイヒマンが育っているという批判はもっともです。
またほかにも90年代に起こった地下鉄サリン事件を例にとりつつ、ひとつのシステムに拠らない複数のシステムに拓いた自己像を探ることで希望を見出す内容になっています。
あなたの行動は賢くスマートなのかもしれません。でもそれは痛み同様あなたを外界からシャットアウトする、そういう外部への入り口を閉ざす、危険なものかもしれませんね。
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