第5話 ブックガイド①「時間は存在しない」
ここから四回に亘っておすすめ科学啓蒙書を紹介します。第一回はカルロ・ロヴェッリによる「時間は存在しない」です。
この本は量子力学から時間の本質を探っていく本で、かんたんに話すとミクロの視点で時間を測るとその存在が消えてしまう、という不思議な知見を述べるものと言えます。時間とは何なのかという哲学的な問いを古代から掘り下げて、現代の科学の最前線ではどのように捉えられるかを考えるわけです。
基本的には時間の流れを物理学で捉えるとエントロピー増大することであると言えるのですが、そのエントロピーって何? とかエントロピーが増大するってどういうことと言った初歩的なことから順を追って説明しています。
ここで断っておきたいのは科学啓蒙書の罠ですが、唱えられているのは絶対的な真理ではなく、一説であるということです。この「時間は存在しない」も物理学のうちの一説であり、詳しく述べると量子重力理論のなかでもループ量子重力理論に相当するものです。現代の時間論がいくつかあるうちの一説がこれであるという理解はとても重要です。なので時間が存在しないからと言ってパニックになる必要はありません。いっぽうで専門的な話をすれば現在ここで唱えられているような量子重力理論を支持させるような観測的事実が出ていないのも確かなのです。こうした様々な角度から物事を見る態度も科学から学んだことですね。
さらにここでは相対論の見方で時間がひとつの決まったものではないという見方も提示されます。ですが面白いのはこの本の異様な熱量でしょう。文学作品や哲学、物理学といったさまざまなピースを積み上げながら解説する力はすごいです。
時間に対する現代科学の考察を読んでみたい方は必読の書です。
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