第5話 釣られた美少女様(白尾 side)

「はぁ…今週も話せなかったなぁ…」



今日は土曜日。咲希は自分の部屋で、もう何回目なのかも思い出せない、猫見さんに話しかけれなかった事に対する反省会を開いていた。



「もしかして、このまま卒業まで猫見さんと話せないのかなぁ…どう思う?ユキちゃん」



未来の悪いシナリオを考えてしまった脳を晴らすために、咲希はユキちゃんに話しかけていた。

ちなみに、ユキちゃんは咲希が気に入ってるヌイグルミの事である!……他の人達は怖いし、話しかけるならヌイグルミが1番だ。

まぁ、それでも猫見さんは別。



「今日も美優さん撫でてもらってたなぁ…わ、私だっていつか……はぁ…」



猫見さんに頭を撫でてもらう。そんな希望を考えたものの、このままではそんな目標を達成できる訳無いことを自覚して、深い溜息をついた。



「…あんた、そんなに溜息してたら幸せも逃げちゃうわよ?」


「あっ、お姉ちゃん…だってぇ…」



いつの間にか部屋にいた白尾 咲月しらお さつきは、私の3歳年上のお姉ちゃん。

(今回のように部屋に侵入してくるのは日常茶飯事なので、もう既に慣れた)



「だってぇ…じゃない。どうせ、またあの恩人ちゃんの事でしょ?」


「…うん」



お姉ちゃんは私から偶に相談もしている影響で、私の抱えている悩みはほとんど把握済みだ。…でも



「そんなに気になるなら、さっさと話しかけて、仲良くなるなりすればいいのに」



お姉ちゃんは、私とは正反対の光り輝くコミュ強だ。だからこそ、私の悩みも些細な事のように言ってのける。



「お姉ちゃんにはわからないよ…はぁ…」


「あ〜、もう辛気臭い…そんな顔してる暇あるなら、ちょっとお使い行ってきなさいよ」


「…お姉ちゃん、それ絶対お姉ちゃんが母さんに頼まれたやつでしょ」ジトー


「ギクッ」


「…それ自分で言うの?…まぁ良いよ、ちょうど気分転換もしたかったし、何買うの?」



お姉ちゃんも恐らく、私に気分転換をしてもらおうとお使いを提案したのだろう。お姉ちゃんは意外とさり気ない気遣いが上手で、昔から私が沈んでいる時には、気分転換に色々な事をしてくれる良いお姉ちゃんだ。今回もきっとそうだろう。



「えーっと…確かココに…あったあった。はい、これ買ってくる物のリストね。」


「はいはい、それじゃ行ってくるね。」


「はい行ってらっしゃ〜い。…よし、見たかったドラマ見よっと」



…さっきの良いお姉ちゃん宣言は前言撤回しよう。



─────────



姉に頼まれた買い物を家に届けてからも、「確かに、部屋にいるよりかはマシかな…」と、目的のない散歩を続けていた。


散歩のお陰で、少しは考え込んでいた頭が晴れてきたな〜と実感してきてから数分後…とある路地裏で私は慌てふためいていた。




「ニャッ?!」




突然だが、私には好きと苦手が共存する物が1つだけある。

その物の香りを嗅ぐと、私は普段は隠している猫耳が飛び出して、とても大変なことになるのだ。


そんな危険な物の正体は…[マタタビ]だ。


お姉ちゃんや母と違い、マタタビの匂いを嗅ぐと猫耳を生やしてしまう私は、外出時はそれなりに警戒するようにしている。今いる路地裏も、その為に通った道のはずだったのに…


(な、なんでこんな場所からマタタビの香りが?!)


何故か突然香ってきたマタタビの匂いで猫耳を生やしてしまった私は、咄嗟に声をあげてしまった事を後悔しながら、その匂いの元凶が近付いてくるのを察知して、息を潜めて本能を押さえ込んでいた。


(ぼ…帽子持ってきといて良かった…これで耳は隠して…マタタビの方も、この調子なら我慢できそう)


そう思って少し安心してきた私の覚悟は、目の前に現れた人物によって一瞬で霧散した。



(…えっ?!?!な…なんでこんな場所に猫見さんが…?!?!)


これはダメ、本当にダメだよ……私が学校で常に気にしてしまっている猫見さんと、本能を刺激するマタタビの組み合わせなんて……抑えられる訳ない!!!



(もう〜…!!!!無理!!!にゃー!!!!)


遂に本能を抑えきれなくなった私は、猫見さんと、その猫見さんが持つマタタビに向かって飛びかかった。

猫耳を隠すために被ったはずの帽子も、勢いよく飛びかかったせいで地面に落ちてしまった。


(ん〜…!…マタタビ美味しい〜♪それに普通のマタタビじゃない!猫見さんのマタタビ!!こんなの普通のマタタビよりも数倍の価値があるに決まってる!!)


そんな事を考えながら、マタタビに脳を支配された私は夢中でマタタビを頬張って…



「なに…してるの…?白尾さん…?」



そんな猫見さんの声で現実に引き戻された。


(…………?!?!?!み、見られた?!?)


ずっと話したかった猫見さんに話しかけられた+マタタビの興奮+猫耳を生やしているところを見られた…そんなたくさんの状況を認識した私の脳内は、数秒固まったのちにパニックを起こした結果…ここ最近での、1番の願望が叶えるチャンスかもしれないとゆう結論をだして、その考えのままに行動を起こした。



「…ね…猫見 奏多ねこみ かなたさん!!!」


「ひゃ、ひゃい?!!」


「わ…私の頭を…撫でてくれませんか!!」



(言っちゃった!遂に言っちゃった!!わーい!!!……………ホントに言っちゃった?!?!えっ、これどうなるの?!猫見さん固まっちゃってるし……猫耳も見られた…ちゃんと仲良くなってから明かそうと思ってたのに…もしかして仲良くなる前から嫌われ…)



咲希の心は、そんな不安で暗い色に染まりかけて……




「な…撫でて良いの?!?!」






一瞬で、喜びの…明るい色に染まった。






✂︎- - - - - - - -キリトリ- - - - - - - - - - -

もしも読んでくれた人がいるなら…


・初心者の初執筆なので、言葉の違和感や誤字などがあるかもしれません…もし見つければ遠慮なく指摘していただけると助かります!


・リアル&初執筆で更新頻度も不定期ですが、できる限り頑張ります。

[作者コメント]

咲希ちゃん良かったね!いっぱい撫でてもらおうね!今回は少し長め!構想が良い感じに湧いてきたので、現在時刻の深夜3時に急いで書き留めました…みんなは夜更かし気を付けてね!6時に更新されるように予約して寝ます!


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