第16話 スクエア

 今回はスクエアについて話してみようかと思います。怪談の中でも有名なものかと思います。僕が昔から好きな怪談のひとつです。


 たしか、こんな話だったと思います。


 夜の雪山、なんとか山小屋にたどり着いた四人の登山者たち。まともな明かりは無く、暖をとることもできない。彼らは極寒で眠ることを避けるため、あることを思いつく。四人がそれぞれ四隅に立ち、その中の一人が壁づたいに隣の隅へ移動する。隅に着いたら、そこに立つ人物の肩を叩き、待機する。肩を叩かれた人物は、また隣の隅へ向かっていき、同じことを繰り返す。これを朝まで続けて眠らないようにする。そうして登山者たちは一晩を乗り越え、無事に下山することができた。が、その後に気づく。登山者たちが眠らないようにおこなったそれは実際にやってみると四人では成立しないことに。最初に移動した人物の居た場所には、誰も居なくなっていたはずなのだから。


 と、いう感じで、この怪談を題材にした話も時々見かけます。それくらいメジャーな怪談です。僕も最初はこれが四人では成立しないのだと気づかず、ネタばらしのタイミングで驚かされました。文字だと結構気づかないんですよね。映像作品でも、画面を真っ暗にするとか、手だけを映すとか、そういう工夫で、ネタばらしまで真相をうまく隠せますね。


 さて、スクエアと呼ばれる怪談ですが、僕が思うに、これは本人たちが知らず知らずのうちに降霊術をおこなっていたというパターンなのではないかと思います。特定の動きをおこなうことで、ある儀式を再現してしまった……のではないでしょうか。ある異世界へ行く方法は、エレベーターで特定の操作をおこなうというものです。その操作は複雑なゲームの操作を想像させます。覚えるのも大変そう。と、考えるとスクエアの怪異は人数さえ揃っていれば、比較的簡単な儀式なのでしょう。


 たまに考えるのですが、この世界はなんらかの、コンピューターの中の世界なのではないか、僕たちはゲーム世界の住人なのではないか、そんな想像をします。そして、怪異とはコンピューターの世界に起きるバグなんじゃないかって……思うんです。怖い想像なので、考えるのは、ほどほどにしています。


 で、怪異を呼び出したり、異世界に行ってしまうような儀式は、ゲームでバグを起こすための挙動に似ているなと、ふと思ったわけです。意図的でなく偶然に世界のバグを発生させる挙動をおこなってしまった。スクエアとはそういう話なのかもしれません。

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