第3話 かまいたち

 今回は『かまいたち』という妖怪についてゆるく語っていきたいと思います。


 皆さんは、かまいたちと言われると何を想像するでしょうか?


 かまいたち、という芸人さんが居ますし、かまいたちの名前がついた有名なノベルゲームもありますね。ゲームの方はもう懐かしの一作になっているでしょうか。


 そういう風に日本に住む人なら一度は見聞きしたことがあるであろう、かまいたち。この名前を持つ妖怪が存在するんです。


 かまいたちという妖怪は日本でも特に北の方で伝わっている妖怪だと思います。


 この妖怪が何をするのかというと、人を転ばせるんですね。いえ、結果だけを見ると人を転ばせるという妖怪なのですが、実際はさらに二つのことを人にするそうです。


 一つ、人を転ばせる。


 二つ、人を切りつける。


 三つ、人の傷を治す。


 と、このように、転ばせる。切りつける。傷を治す。の三つを一瞬のうちに終わらせる妖怪なんです。僕にはなんだか、面白く思えます。


 僕にとって妖怪という存在は怖くもあるのですが、同時に面白おかしい存在のようにも感じられます。


 さて、先ほど僕は、かまいたちという妖怪が北の方で伝わっている妖怪だと言いました。たぶん、雪の多い場所、人の転びやすい条件が揃うところで、かまいたちは出現しやすいのではないでしょうか。


 かまいたちは平らな土地で出現する妖怪だという話もあり、思うに、この妖怪は人がなんでもない場所で転んだ時に、かまいたちのせいで転んだのだ。というような理由を作るために生まれた妖怪なのではないかと思っています。


 大昔の人たちは理解の難しい現象について妖怪や神様という存在に置き換えて理解しようとしました。自然現象の雷を、雷様と呼んだり、そういう置き換えはキャラクター化とも呼べるかもしれません。


 つまり、かまいたちとは、人が転ぶという事象のキャラクター化なのです。転ぶという概念に妖怪としての形をつけられたもので、大昔から人間はこのように事象をキャラクターに置き換えることが得意だったのでしょう。


 ホラーにおいて幽霊がその姿を表すと、その後はモンスターものになり恐怖感が減ると言う人がいます。これは、それまで理解の難しかった存在が、形を得てキャラクター化してしまったことによるのでしょう。


 理解のできないものは怖い。という話は以前もしましたが、逆に言えば理解のできてしまったものはある程度の恐ろしさを失うんですね。僕はそう思います。


 かまいたちは今日もどこかの人を転ばせます。そうして妖怪たちは今も僕たちの暮らしの近くにいます。

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