力量差
「ま、まさかこれほど魔法の力があるとは思わなかった。確かにこれだけ力があるのなら外の世界で試したい、と言う気持ちもよくわかる」
「すでに私以上の魔力を持っているもんね、アルトゥール様は」
カインとイル、二人共が俺のことを褒めてくる。
さすがに今の状況だと悪い気持ちにはならない。
「ただ俺は君のお母さんから剣術を頼まれている。そちらも見てみないことには外の世界へ行く承諾を出せないな」
確かにもっともなことである。
むしろ魔法を使うのは良くなかった。
「わかりました。では今度は身体強化以外の魔法は使わないので、剣の相手をお願いします」
「任せておけ」
嬉しそうに頷くカイン。
再び剣を構えている。
だからこそ俺も同様に剣を構え、そのまま気配を消していく。
ただ消すだけではなく、魔法で自身の姿すらも消していく。
そのことにカインは気づいている様子はない。
だからそのまま背後に回り、木剣を首元に近づける。
「これでいいですか?」
「っ!?」
カインには何が起きたかわからずに困惑する一方である。
「今のはまた魔法か!? まさか妨害系の?」
「いえ、今のは身体強化系ですね。姿を隠して気配を隠す程度のものですよ」
「なるほどな。こんな感じか?」
カインもAランク冒険者である。
この態度を真似することなんて造作もないことだった。
ただ……。
「これを継続して戦うのはなかなかきついな。魔力の消耗が激しい」
「俺は生粋の剣士じゃないですからね」
「さながら魔法剣士ってところか。確かにこれだけの力があれば……。いや、あとは純粋な剣術が見たいな。身体強化なしでやってくれ」
「……えっ」
流石に俺はまだまだ成長途中の子供である。
身体強化もなしだとリーチの差を補きれずにあっさりと負けてしまうのだった。
◇◇◇
「大体の能力はわかった。瞬間的な力ならAランクにも匹敵するが、継続する力はまだまだこれからだな」
確かにゲームでもいかにメインキャラたちのHPやMPを消耗させずにボスまで辿り着けるか、というところはある。
最近のものだとボス前にどちらも回復させてくれるようなものもあるのだけれど、わざわざ倒すべき相手を強くするなんて物好き、そうそういないだろう。
「まぁ、冒険者のランクとしてはCからDあたりってところだな。継続力についてはこれから俺たちが教えていく」
そこで俺の顔をじっと見てくる。
「まぁ、あまり遠出しなければ外でも問題なくやっていけるだろうな。そのように奥方様には伝えておくよ」
「あ、ありがとうございます」
これでようやく本格的に魔物を倒してのレベル上げを始めることができる。
今までが非効率すぎたので、ここから急成長を遂げていくだろう。
「しかし、瞬間火力は俺以上の魔法、だもんな。イル、教えることはあるか?」
「むしろ私が教わりたいくらいよ。でも、それだと私の仕事は……こっちの子を教えることになるのかしら?」
イルの視線がルッカを見る。
「ルッカはヒーラーですからね。頼んでもいい?」
「は、はいっ」
ルッカが目を閉じると周囲一体に淡く暖かい光が覆う。すると瞬く間に俺たちの傷が治っていた。
「あ、あははっ……。この魔力量……。本当に私、すること何もないよ……」
「そ、そんなことないですよ。俺たちはまだまだ初心者ですからお二人の経験を聞かせてもらえたらすっごくありがたいです」
俺に合わせてルッカも首を縦に振る。
「わ、わかったよ。それならむしろ俺たちに同行してもらって外の旅を知ってもらう方が良さそうだな。それも踏まえて確認してくる」
カインは早々に館へと向かっていった。
「それじゃあカインが行ってる間に魔法の基礎を教えておきましょうか。もう知ってるだろうけど。魔法を放つ時、どんな工程を踏んでるかはわかるかしら?」
「ふわー、ってしてからぽわー、ってなって、チュドーン! って感じです!」
自信たっぷりに答えるルッカ。
おおよそそんな感じなので俺も頷いていた。
ただ、イルは思わず頭を抱えることに。
「天才ってこういう人のことを言うのかしら……」
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