第13話 お伽話とお見送り
私達は1階のリビングで私の部屋で見つけた茶封筒の中身について話し合いました。
「賢者ラニエル……どこか聞いた覚えが」
と、アリーゼ様が顎に手を当て、考え込みます。
「あれだ。昔、絵本で読んだお伽話だ」
アデル様が答えを出す。
「ああ! そうでした! 確かストーリーは賢者ラニエルが精霊のお告げで…………なんでしたっけ?」
「魔神バランを封印する話だ」
「そうです。お兄様、よくご存知で」
「ついこの前、エルザに読み聞かせたからな。ただ、この話は我が国の北西地方の片田舎に伝わるお伽話。東のサネガル地区とは関係があるとは思えない」
「ティアナ様は賢者ラニエルのお話はご存知ですか?」
「いいえ。初耳です」
話の中に精霊が出てくるが、私は賢者ラニエルという名も魔神を封印するというストーリーも聞いたことがない。
「ま、それは当然だろう。マイナーなお伽話だしな」
「でも、お兄様はご存知でしたよね」
「だからそれはエルザに──」
「なぜエルザにマイナーな片田舎のお伽話を?」
「それは私も昔に聞いたことがあり、たまたま絵本があって──」
「だからどうしてです?」
「それは……知らん」
アデル様は難しい顔をして首を振る。
「ええと、アリーゼ様は何か思うとこがあるのですか?」
「いえ、ただ不思議だと。片田舎のお伽話をどうして読み聞かせを受けたのか」
「そう言われてもな。母上にも聞いておくよ」
◯
翌日の昼前、アデル様が訪れてきました。
「支度はいいのか?」
「はい。わざわざお出迎えありがとうございます」
「気にしなくていい。むしろ我が姉のわがままに付き合ってもらってこちら側がすまない気持ちだ」
今日は第1王女メリッサ様がご出立なされる日でありました。
私とアデル様は馬車に乗り、城へと向かいました。
庭園前で馬車を降り、そこから城へと徒歩で進みます。
「すまない。姉の馬車が門扉の前を牛耳っていてな」
「いえいえ、お気になさらず」
庭園は広く、さまざまな花壇があり、色とりどりの花が美しく咲き誇っておりました。他にも綺麗に刈り込まれた生垣もあったり、噴水にバラのアーチ、滑らかな彫像、東屋が庭にあります。
「素晴らしいですわね」
「お褒めいただき光栄だ」
アデル様は私をエスコートするように庭を案内してくれます。
一通り庭を歩いた後、門を潜り、私達は城の中へと入りました。すると入ってすぐオレンジ色のドレスを着た第3王女マナベル様と私達はお会いしました。
「デートはお済みになって?」
と、マナベル様はアデル様にイタズラっ子のような笑みを浮かべます。
「何、馬鹿を言ってるんだ。ついでに案内していただけだ」
「へえー」
「ニヤニヤするな」
そう言ってアデル様がマナベル様の頭を小突く。
「いたーい」
◯
「ティアナ、お見送りに来てくれて感謝するわ」
第1王女メリッサ様が別れの際で私に感謝を述べた。
「いえ、そんな。当然のことです」
「そんなに堅くなる必要はないわ。気を楽にしてちょうだい」
「はい」
「アデル、彼女のことよろしくね」
「なぜ私に?」
「別に」
なぜかメリッサ様は含んだ笑みをアデル様に向ける。
「では、お父様、お母様、お元気で」
「ああ。お前も達者でな」
「体には気をつけるのよ」
そして第1王女メリッサ様とご息女は馬車に乗り、城を去って行った。
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