第4話 同盟不破
「おはよう」
翌日も霧子は僕の家の前で僕を待っていた。
僕の手を引き、真っすぐ前を見て登校する。
なんとも迷いのない歩き方、その横顔をチラチラと覗き見る僕。
(なんだかとても…嫌な予感がする)
凛とした迷いのない顔に僕は漠然とした不安を感じていた。
信号待ちのとき、霧子は真っすぐに向かいの信号機を見たまま僕に話しかけたんだ。
「八雲、今日は先生に聞いてみようと思う」
「何を?」
「なぜ男は『くん』で女を『さん』で呼んだか?昨日も話したぞ」
「あっ…あぁ」
まだ気にしてたのか。
「男女平等についてネットで昨晩調べた」
「男女平等?」
「知らないのか? 男とか女とかで区別、差別をしないことだ」
「う…うん」
「全員『さん』で良かったのに、なんで区別したのか? その真意を聞こうと思う」
信号が青に変わると霧子は右・左・再び右と確認して手を挙げて横断歩道を歩きだした。
下を見ていたから気づいたのだが霧子は横断歩道の白いとこしか踏まなかった。
今でも変わらず白いとこしか踏まない。
そして朝のホームルームで、いきなり教壇に立つ先生に手を挙げ霧子は尋ねた。
「先生、なぜ男と女を『くん』と『さん』で区別したんですか?」
クラスの全員がポカーンとした顔で霧子を見ていた。
僕以外は…。
僕は自分の靴を見ていた。
「はい?霧島さん?なに?」
「なぜ男と女を『くん』と『さん』で区別したんですか?と聞きました」
霧子は同じ言葉を繰り返すことを嫌う。
すこし苛立っていたように思う。
いや大分、苛立っていた。
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