第2話 常流闊歩
「おはよう」
僕の登校初日は、彼女の挨拶から始まった。
色々な意味で記念すべき第一歩は右足からだった。
彼女の細い腕がスッと伸び、フリーズしている僕の左手を掴んで彼女に誘われるまま踏み出したのだ。
「おっ…おはよう?」
彼女に手を引かれたまま数歩歩いて、やっと挨拶を返せた僕、つくづく情けない。
傍から見たら姉と弟だ。
実際、身長差もあるし。
黒い長い髪、大きな目、細く長い手足、彼女の特徴は高校生になった今でも変わらない。
変わったことは…身長差がギリギリなくなったことくらいだ。
改めて思えば、彼女は、あの頃から髪形も変わっていない。
学校に着くまで何も話さなかった。
彼女は入学式のときと同じ、まっすぐに前を見て歩いていた。
そのまま学校に着くまで僕の手も離さなかった。
靴を内履きに履き替えて同じ教室へ入る。
僕は2列目の一番前の席、彼女は4列目の一番後ろの席、離れて椅子に座って、ホッとした。
ようやくドキドキが収まった頃、担任が入ってきた。
女の先生、端から名前を読み上げていく。
「
呼ばれて立って先生にお辞儀すると他の生徒がパチパチと拍手する。
儀式のような流れ作業の後、彼女の名前が呼ばれた。
「
『キリシマ キリコ』
そのとき初めて、僕は彼女の名前を知った。
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