ミス・ミスト質問する
第1話 隣人奇譚
僕にとって団地とは『パラレルワールド』である。
壁一枚隔てたアチラ側は異世界と呼んでもいいほど似て非なる世界だ。
同じつくりの部屋(世界)で暮らすパラレルワールドの住人、それが団地の隣人だと僕は思う。
つまり普通に暮らしていれば接点が無い。
団地の階段に座り、いつも本を読んでいる女の子、誰とも話さず交わらず、まさに異世界の住人のようであった。
いつから住んでいるのか?
何階の住人なのか?
それも知らない。
その女の子は、いつも本を開いて階段の日陰で本を読んでいる。
いや見ている。
時に本が逆さまだったりするから読んではいないのかもしれない。
背が高いので僕より年上だと思っていた彼女が自分と同じ歳だと知ったのは小学校の入学式だった。
紫のランドセルを担いで母親に手を引かれて、僕の母と話しながら小学校へ向かった。
僕のことなんて気にもせず、真っすぐ前を見て歩いる彼女の小学一年生とは思えぬ凛とした横顔をチラチラと見ながら歩いていた僕は、彼女に比べて自分が幼いように思えて恥ずかしいような気持ちになり入学式でもチラチラと彼女を見ながら基本、下を向いたまま入学式終えたのだ。
初登校の日、真新しい青いランドセルを担いで玄関を出ると、彼女がドアの前にいた。
「おはよう」
ドキッ‼
初めて彼女の声を聞いた。
登校初日、団地の玄関前に突然、パラレルドアが開いた…。
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