第2話 小説の存在意義
小説の使命。初心者の段階でそのようなことを考える必要はありません。もちろん考えても良いのですが。
読者は何を求めて本を手に取るのか。純文学であろうと大衆文学であろうと大方、気分転換のためです。とにかく、知的にわくわくしたい、感情的にわくわくしたい、しんみりしたい、もらい泣きしたい。気が沈みがちだから、愉快に笑いたい。むしゃくしゃするから、怒り大爆発の物語を読んですっきりしたい。
小説は生活必需品ではありません。娯楽です。娯楽の第一の存在意義は、機械的で退屈になりがちな日常生活に精神的な活力を与えることにあります。つまり、面白ければそれで良いのです。面白い。それだけで立派な存在理由になるのです。
もちろん、作者の中にも読者の中にも、研究者や評論家や編集者などの専門家の中にも、小説にそれ以上のものを求める人もいます。例えば、人生の糧となる教訓。視野を広げる疑似体験。
確かに、小説に娯楽以上の意義を付与しようと試みるのは立派なことです。しかしやはり、それは存在意義としては第二でしょう。例えば教訓を念頭に置くのなら、人生訓や処世術を集めた解説書、偉人の伝記などを読み書きすれば良いのです。それが真正面からというもの、真っ当というもの。専門家としての自意識と矜持が高くなればなるほど、普通の人との乖離が進む。小説に限ったことではありませんが、良くある話です。
初心者はそのような高度な意義を追求する必要はありません。もちろん追求したければすれば良いのですが。初心者は高みを目指して気負い過ぎてはいけません。高みを目指すのは義務ではありません。とにかくまずは、きちんと書いてみましょう。
創作を通して作者が自分自身を見詰め直す。小説のその種の在り方については、必要以上のことを述べるつもりはありません。架空の物語を創作するのなら、それはそのまま続ければ良いでしょう。自叙伝や私小説やそれに類するものに関しては、発表の方法に注意を払う必要があります。例えば、他者への侮辱や名誉棄損に該当しないかなどです。
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