第17話 強盗

「ねえ、藤花パイセン!朝陽帰って来てない?」


 日夏が焦った様子で言う。


「……来てない。日夏が連れ帰ってきたんじゃないの?」


 私は聞いてみる。昨日探しに行ったんじゃ?


「それが実は……なんか急に逃げられて、それから失踪してる」


 失踪ね……なんだかその言葉を聞くと、玲奈の事を思い出すなぁ。


「お姉ちゃん、助けて!」


 椿の叫び声が聞こえたので向かう。そこには黒服の人物がいて、椿が人質になっている。


「強盗だ!金を出せ!」


 この声……どこか聞いたことある声だ。


「藤花パイセン、あたしならナイフ奪えたら倒せそうです」


 日夏は余裕そうに言っている。


「日夏は行かなくていいよ……私がやるから」


 私は黒服の人物に近づく。


「ん?こいつがどうなってもいいのか?」


 黒服の人物は笑いながら、椿にナイフを向ける。椿を人質に取るやつは絶対に許さない。でもこの状況で近づいたら危険だ……どうする?


「ほら、近づけないだろ?大人しく金を出すか、こいつのことを◯すか、決めろよ」


 どっちも選ぶわけがないわ。あ、そういえば蘭くんがいない。と思ってると、黒服の人物の後ろに蘭くんがいる。


「藤花さんの大切な妹さんに手を出すやつは許しません」


 蘭くんは花瓶を持って、それを振りかざす。黒服の人物の頭に当たり、そいつは倒れた。


「さて、そいつを椅子に縄で縛り付けて尋問するか」


 私は、そう呟いた。あ、そういえば顔見てないな。確認してみるか……。


「はぁ、お前かぁ……」


 私は呆れて声を出す。犯人は朝陽だった。


🪻🪻🪻


「くそっ!離せ!」 


 やっと意識を取り戻した朝陽は暴れている。


「朝陽、なんでこんなことしたか話して」


 日夏が説教をするように言う。


「お前が……」


 私の方を見てなんか呟いてきた。


「お前が優れてんのが悪いんだよ!だからお前から何もかも奪ってやろうとした!」


「何それ、嫉妬?」


 思わず私は笑ってしまう。


「うるせぇ!」


 朝陽が縄をほどいて椅子から落ちる。


「そんなくだらない理由で、椿さんのこと人質にしたんですか?二度と許しませんからね」


 蘭くんがこんなに怒ってんの初めてみたかも。朝陽が逃げ出そうとしたので押さえつける。


「警察来るまでそこで大人しくしてろ」


🪻🪻🪻


 警察が来て、朝陽が連行されていく。


「……朝陽、一応言っておくけど、お前退職な」


 念のために言っておいた。帰ってこられたら迷惑だからだ。やっと警察と朝陽が見えなくなる。


「あーあ、好きだったのになぁ。なんか、一気に覚めたっすわ」


 日夏が呟く。嘘でしょ、日夏ってあんなやつのこと好きだったの!?

 

――第参章、完。







 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る