第肆章・"鈴蘭"の想い

第18話 蘭の初恋

「ねえ君、すごく可愛い。よかったら俺と一緒にデートしない?」


 私は今、ナンパされてる。実は初めてのことでどうしたらいいか分かんない。


「……うざい」


 正直な気持ちを思わず言ってしまう。


「そういうこと言うなら、力ずくで君の事を手に入れようかな」


 そいつが腕を掴んでくる。

 

「……離して」


 勿論、離してくれない。逃げたくても逃げれない。


「藤花さんに手を出すのは、やめてください」


 蘭くんがそいつを突き放す。


「チッ、男がいるんかよ。じゃあいいや」


 なんか誤解してくれてナンパしてきた奴は帰っていた。


「藤花さん、大丈夫ですからね。僕があなたを守りますから」


 そういえば朝陽のことがあってから蘭くんの様子がおかしい。私の事を本気で守ろうとしてくれる。


「蘭くんは優しいね。よしよし……」


 思わず私は蘭くんの頭を撫でる。


「いつまでも子供扱いしないでください。僕だってあなたのことぐらい守れますから」


 蘭くんがどこかに行く。確かに、もう蘭くんもあの頃とは違うかも。


🪻🪻🪻


「椿さん、ちょっと話聞いてくれますか?」


 スマホを見ながらソファで休憩してる椿さんに声を掛ける。


「うん、どうしたの?」


 椿さんが僕の方を見つめてくる。椿さんって藤花さんに似てるなぁと思った。


「実は……僕、何年間も藤花さんのことが好きなんですよね。それでそろそろデートにでも誘ってみようかなと思って……」


 自分で言っていて恥ずかしくなってきた。


「え!?お姉ちゃんの事、好きなんだ!?それで私に相談をしに来たと……」


 椿さんは思わずスマホを落とす。


「えー、でも私もデートとか経験ないからね……あ!デートじゃなくて遊びに行こって言ったら誘いやすいんじゃない?」


 良い提案だったので採用する。それからデートスポットとか調べたり色々と話し合ったりして、僕と藤花さんのデートの計画が出来上がった。まあ藤花さんを誘えなきゃ無理だけど。


「ちなみになんでお姉ちゃんの事好きになったの?」


 椿さんに問われたので僕は語り出した。


🪻🪻🪻


――あれは、まだ僕が小学生ぐらいの頃。


 いつもと違う帰り道を歩いていると、不意に花屋が視界に入った。


 気になったので立ち寄ってみると、そこには怖そうな店長がいた。つり目で耳に藤の花のピアスを付けていて、なんとなく怖そうに見えた。


「いらっしゃいませ。……君、何買いに来たの?」


 怖そうな店長に話しかけられたが、思っていたよりも全然優しそうな雰囲気だった。


「えっ、えーと。気になったので入っただけです」


 その時の僕は正直に答える。


「……どの花が気になる?」


 僕がその時、気になっていたのは花ではなかった。その店長……藤花さんだった。まあそれは正直に言わなかったけど。


――それが僕の一目惚れの初恋だった。


 

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