第8話 花谷姉妹の休日2
「ねぇ、もっと近づいて……」
お姉ちゃんに言われて見ている映画のワンシーンだ。思わず私は目をそらしたが、お姉ちゃんはガン見している。
「……椿もこれぐらい積極的なら良いのにね」
お姉ちゃんが呟く。2人きりになると、このお姉ちゃんシスコン度が高くなる……
🪻🪻🪻
はぁ~。やっと解放された。映画の記憶はなんか曖昧だ。ただ横にいるお姉ちゃんがずっと映画をガン見していたことだけは鮮明に覚えている。
「……さてデートは終わりにして帰ろっか!」
お姉ちゃんは楽しそうに言う。お姉ちゃんが楽しかったなら良いけど、デートって!?そう言われてみればそう見えるけど……
ぎゅっ。お姉ちゃんが急に私に抱きついてきた。とりあえず私もお姉ちゃんに抱きつく……お姉ちゃんって意外と暖かいんだ、なんかもっと冷たいと思ってた。
「あ!藤花さん、こんにちは!」
休日なのにバイトの蘭くんに出会う。あ、また蘭くんに見られたじゃん、お姉ちゃんに抱き締められてるところ。前回の失言があるから、ちょっと恥ずかしい。
「二人で出掛けるなんて、やっぱり仲良いんですね」
蘭くんに言われる。確かにね、こんなに仲良くしてる姉妹は珍しいのかもしれない。
「……うん、デートだよ」
お姉ちゃんにさらにぎゅっと抱き締められる。ちょっと!誤解招くからやめて……
「デートなんですか!?」
蘭くん、純粋すぎて冗談通じてないじゃん。お姉ちゃんが今度はやらかしたよ……
「あ、デートじゃないよ。暇だから、二人で出掛けてるだけ」
私は誤解を解くために言う。そう、これはデートじゃない。
「そうなんですね。ちなみにどこ行ってたんですか?」
お姉ちゃん、また変な発言しないかな……
「……船堀タワー行って、姉妹のラブロマンス的な映画、見てきた」
それは言わないでよ……またお姉ちゃんが失言をした。
「やっぱり、二人でデートをしてたんじゃ……」
お姉ちゃん、また誤解招いちゃったよ、どうするの……
「違う!お姉ちゃんが勝手に見たがって、見せつけられただけ!」
私は思っていた通りの事を口にする。
「本当?椿もそういうの見たかったんじゃないの?」
お姉ちゃんに言われる。いや別に、そういうの嫌なわけじゃないんだけどね……
「やっぱり藤花さんと椿さんって仲良くていいですね!僕にも二人みたいに仲良い人がいればいいのに……」
蘭くんが一瞬、曇った表情になる。そういえば蘭くんに仲良い人なんていないかも。
「仲良い人がいなくても蘭くんはみんなに親しまれてるよ」
お姉ちゃんが蘭くんに言う。蘭くんの表情が晴れる。なんか結局、お姉ちゃんって優しいんだよね。そういうところも合わせて、私の誇りだ。
――第壱章、完。
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