人間不信はダメかい?

人間不信だって?


悩んでるの?


それ、辛い?


何が辛い?

どんなふうに辛い?


教えてくれないかな。


君は、もっと友達がほしいの?

多くの人の中に入りたいの?


他の人みたいにって……

そう、思ってるんだね。


でも、君は他の人とは違うからね。



ううん、そうじゃないよ。

君が人間不信だからじゃないよ。

そんなことが理由じゃない。


少しは、君だってわかってるんだろ?


自分の中に、人を信じたがってる自分がいること。

その気持ちが、本当は人を信じない気持ちよりも強いこと。


だけど、裏切られることを恐れてしまう……


それで、そんな自分が人間不信だなんて、思ってるんだろ?


じゃあ、聞くよ。

人間不信はダメかい?

もし僕が人間不信だって言ったら、

君はどうするの?

そのこと、信じる?

それとも信じない?


やっぱり……信じないかい?


僕が、君の気持ちわかるって言ったら……

君はそれも嘘だって思うの?


たとえ君に嘘だと思われても、

僕は、君の気持ちがわかるような気がするんだ。

それは、本当のことだよ。

だって、僕だって人間不信なんだからね。


人は……嫌いだって、ずっと思ってた。

人が嫌いだなんて理由は、

僕が生きていくのに致命的だから、

僕自身も生きていちゃいけないんだって……

ずっと思い込んでいたよ。


これは、君が信じようが信じまいが

どうだっていいことさ。

僕が、僕自身の真実だってわかって、君に話してる。

だから……それだけでいいんだ。


人間不信が辛いことだってのも……本当はわかる。


だけどね……

辛いのは人間不信じゃなくて……

こんなにも誰かを信じたいと望んでいるのに、

それができないことだよね。

人はそれを人間不信というんだって……

そう思うかもしれないけど……

僕から言わせれば少し違う。


本当に出会う人出会う人が……

信用できないことを口にしたり、

態度で示したりするのさ。

裏腹なことを、したり言ったり……

だから、僕はいつも混乱してしまう……

その人を信じていいのかわからなくなる。


僕らは、もともと疑り深いのさ。

だから、余計に、人を見てしまう。

そこで、どの人にも大きな矛盾を見つけてしまう。

他の人からすれば、そんなこと

気にする方がおかしいって言われることかもしれない。

だけど、その矛盾がやっぱり後で綻びとなる。


その時点では、

僕はまだその人を信じてはいない。

そして、信じてなかったことに

安堵してしまうんだ。


僕の話をきけば、

みんな僕を人間不信と言うさ。

だからそんなこと、僕はいちいち話さないけど……


でも……もし、

その僕が感じる矛盾を

ちっとも感じない人に出会ったとき……

僕は、今まで人間不信だった自分に

感謝するんじゃないかな。


え?

それは理想だって?


そうかもしれない。

そんな人、いないかもね。

人は、自分も含めて、

誰でも多少の矛盾をはらんで生きてる。


だけど……

だけどさ……

うまく言えないんだけど……

なんだか、許される矛盾と、

許されない矛盾ってのがあるように思うんだ。


それを決めるのは誰かって?


そりゃ、けっきょく僕になってしまうけど……

でもね……

何となく信用できないと心の片隅で思った人に対しては、

やっぱり信用しなくてよかったって、

後で思うことの方が多いんだ。


僕もよくわからないんだけど……

僕ら……

僕らって闇雲に人を信用しないのかな?

人なら、誰でも信用しないのかな?

信用できない人には、

何かそれなりに共通のものを

感じてるんじゃないかな?


そりゃ、誰だって、

最初から信用できる人に出会えていれば

こんな苦労はしないし、

人を疑って自己嫌悪になることもないけどね。

心の底から信頼できる人に出会うって、

けっこう難しいことなんじゃないかな?


でもさ……

やっぱり、人を信じるより、

疑う気持ちの方が強いのは確かだろうね。

それって、どこか心に傷があるせいかな……

誰かに裏切られたり、嘘をつかれた記憶が色濃いせいかな……

でも……ほんと、まだそれでも

誰かを信じたいと強く思ってるんだよ……


ねえ、もう一度聞くけど、

僕が人間不信じゃダメかい?


もしかして人間不信であることで、

守られてるものって、ないのかな?


もし、それが自分の心を守ることになるなら、

僕は、君が人間不信でも構わないと思う。

君自身が、昔からずっと大事にしてきた心や、

君の想いを守ることならさ……

きっと、人間不信だっていいと僕は言う。

そしてたぶん、僕も君と同じことをしてるんだと思う。


自分が人間不信であることで……

本当に心の底から信じられる人を

昔から飽きずに探そうとしている……


人間不信であることで、

信じるってどういうことか、

心底知りたいと願ってる。

本当に、信じることを、信じられるということを……


だけどね、

たとえ人間不信であっても、

君自身を信じる気持ちは忘れないで。

自分の本当の気持ちだけは、見失わないで。


そこを見失うと……

本当に、元に戻れないところへ行ってしまう……

そんな気がするんだ。


信じたいのに、信じられないのと、

もう誰も信じられないというのは、

少し違うだろ?


僕らはまだ、

誰も信じられない訳じゃないと思う。

この先に、

きっと誰か、僕でも信じられる人に出会えるさって、

思ってる。

今はまだそんな人に出会えなくても、

心の底から、徹底的に信じ込ませてくれる人、

そんな人に出会えるかもしれないっていう希望は、

まだ捨ててないよ。


それに、そんな人が、

もしかしたら僕にとっては君かもしれないだろ?


それなら、まだ僕ら、

人間不信でもいいじゃないか……




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