明日はさよなら

明日訪れるかもしれない死に脅えてる人が、

人を好きになっちゃいけないよね……


だって、明日死んじゃうんだよ?

せっかく偶然にも出会って、

偶然にも恋に落ちたのに、

明日にはいなくなってしまうなら、

あなたに恋したことは、

あなたに伝えちゃダメだよね?


だって、わたしがもし明日死んじゃうようなヤツなら、

あなた、わたしを好きになる?

明日じゃなくてもいい。

近々そうなる。

あなたより先に死ぬのはわかってるんだ。


そんなヤツを、あなた選ぶ?


わたしなら選ばない。

せっかく好きになっても、

置いてけぼりにされる。

ずっと一緒にいたいのに、

またひとりぼっち。

一人がいやで、あなたといたのに、

また一人になる……

それが、少し先の未来に確実に訪れるとわかったとき、

あなた、それでも、そんな人を好きになったりする?


寂しいのが一番嫌いなんでしょう?

今は楽しくても、この先、

そう遠くない未来に、確実に、

今まで以上の悲しみが訪れて、

寂しくて泣くよ。


人は簡単に別れていくけど、

わたしとあなたの別れは、絶望的なものだよ。

性格の不一致?

価値観の違い?

すれ違いの生活?

どれもこれも、ばかばかしい理由だと思わない?

今日出会って、明日には別れるしか道がない二人には。


今までがこんな人生だから、

何も希望がないとわたしは思った。

でも、一つだけ、

最後の瞬間に、あなたが希望をくれた。

「それでも、君を選ぶ」と言ってくれたこと……


明日……さよならする、わたしに。


嘘かもしれない。

そう、嘘だ。

でも関係ないよ。

わたしは明日死ぬから。

最後の言葉は覚えておくよ。

わたしの宝物にするんだ。

そして、その瞬間に多くのことがわかったよ。

もし、わたしが明日にはお別れしなきゃいけない人に出会って、

その人を好きになったら、

わたしはたとえ明日別れる人でも、

その人を選べると思った。

この勇気はあなたがくれた。

明日別れるなら、

たとえ一日でも一緒にいようとする。

ひとりぼっちになっても、

その寂しさに耐える強さを

その一日で、わたしの好きな人からもらえるだろう。

その一日は永遠に匹敵する。


そんな出会いが一度でもあれば、

たとえ一人でも、きっと強く生きていけるよね?


ねぇ、そう思わない?


それじゃあ、明日には、

わたしあなたに「好きだ」と告げるよ。



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