声を聴かせて

あなたの声を聴かせてほしいな。

何でもいいよ。

あなたが今生きていて、楽しく思うこと。

あなたが嬉しく思うこと、

悲しく思うこと、何でも……

あなたの言葉で聴かせてくれれば、それでいいんだ。


わたしの言葉をいくら並べても、ひとりぼっちだよ。

でも、あなたの言葉があれば、

一人じゃないってわかるから。

少なくとも、誰かいるってわかるから。

ただそれだけでいい。

それだけがわたしの小さな希望なんだから。


本当なら、誰かに声をかけてみたい。

そんなことをしても怪しまれない世界なら、そうする。

どこから来たんですか?

どこへ行きますか?

楽しそうですね?

何かいいことありましたか?

初対面でも、そんなふうに話せる世界で、

気軽に返事を返してくれる世界なら、きっとそうする。

だって、一人では寂しいから。

誰かと話したいから。

一方的な思いではなくて、お互いに心を通わせ、

ただ単純に、相手のことを知りたいと願う世界なら、

きっとそうする。


でも……難しいんだ。

それは、とっても難しいことなんだ。


大人になると、

言いたいことの半分もうまく言えなくなる。

そのくせ言葉は選ぶ。

間違わないように慎重に選ぶ。

でも、そんな慎重に選んだ言葉も、全部間違ってたと、

言ってから気付く。

その時はもう遅い。

どんどん間違った言葉で話す。

そして、間違った言葉で弁解する。

どんどん離れていって、もう戻れなくなっている。

あなたとわたし。


でも、本当は戻れるのにね。

お互いがそう望めば。

ただわたし一人の力だけでは足りないだけで……

だって、昔、わたしが子供だった頃には、ちゃんと戻れていたから。

ただ、大人になると、あんなふうには戻れなくて、

ただ離れていくだけ……


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