ChapterⅠ section1【創造】

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【P Creator】

運命の出会いが、アナタを待っています!

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私は、吸い込まれるようにバナーをタップした。


Charconに大々的に表示される【P Creator】という文字。それを含め、P Creatorというアプリを初めて見る。

罪重 已「Charconの初期設定に入って無かったよね…。こんなアプリ、いつ入れたかな…」

そう考えているうちに、画面が大きく転換した。


《P Creatorへヨウコソ!罪重 已様。理想のキャラクターを選択シテクダサイ!》

Charconの設定を読み込んだのか、私の名前を読み上げながら案内をする。

罪重 已「キャラクター…か。私、絵は小さい頃にしか描いてないな。…あ、おまかせもできるんだ。」

キャラクター選択の《おまかせ》という項目をタップする。

《Charconの情報カラ、貴女に合ッタキャラクターを生成シマス!》

《しばらくお待ちクダサイ…》

P Creatorは、創作者向けのアプリ。

P Creatorを起動しキャラクターの設定をすると、現実世界にキャラクターが反映され、共に生活ができる。

この最先端な技術は、P Creator制作会社【Gerberaガーベラ】が50年間研究した技術であり、その機能に欠陥はない。

まるで生きた人間のように、同じように生活ができるこの技術から世界的にヒットし、今ではCharcon所持者の三分の二がP Creatorを使用しているという情報が公開されている。

…だが、普通の会社員であった私は特に縁もなく、アプリを使用する予定もなかった。

《完了シマシタ!》

Charconから機械音声が発せられる。

その瞬間、画面が眩しく光り出した。

罪重 已「ッ……!」


―――――――――――――――

――――――

罪重 已「………?」

光が収まり、瞑っていた瞳をこじ開けるが…眼の前の情景は特に変わっていない。

一瞬頭に不安が過ぎる。

罪重 已「まさか…不具合」

「こんにちわっ!!!!!!!」

罪重 已「にゃゆわああああああああああああああ?!?!?!?!?!」

「わあ!にんげんさんのなきごえ、すごいね!」

罪重 已「ば、ぼぼぼぼぼぼ、えええととととととと」

「すごいすごい!ふるえてるー!おもしろーい!!!」


―――――――


罪重 已「はぁ…はぁ……ぅ゙っ……」

「にんげんさん、にんげんさん!さっきおくちからでてきたもの、なあに!!おしえて!」

罪重 已「き、きき聞かないでください……」

罪重 已「と、いうか……だ、誰ですか?」

「んゆ?おなまえは、まだない!ごしゅじんがきめて!」

罪重 已「”ごじゅじん”…?ってま…まさか」

先ほどP Creatorを起動したことを思い出す。

罪重 已「あなたは…」

後ろにいた少女の顔をまじまじと見る。

ぱっちりとした瞳に明るいオレンジの髪の色。それと対比した黒が含まれる衣装が特徴的だが、ビビッドカラーの装飾が全体的に際立っている。

「ボク、ぴーくりえいたーでさくせいされたよ!設定は、ごしゅじんがきめるの!」

彼女は、ハキハキとした声を発する。

まるで生きた人間のように、目の前に存在していた。

罪重 已「名前…ですか。ええと…おまかせとかは…」

「ごしゅじんが決めてほしいな!」

罪重 已「そう、ですよね…」

目を瞑りながら、頭で単語を思い浮かべる。

そのあまりのネーミングセンスの無さに、更に頭を悩ませてしまう。

数分経った途端、ある二文字の文字が頭に思い浮かび、つい口づさんでしまった。

罪重 已「…

その二文字に少女はピンと反応する。

「ぴぽ!それ、ぼくのなまえ?!」

罪重 已「あ……えっと…これは」

「ぴぽっ!ぴぽ!ぴぽーーー♪」

罪重 已(適当に決まってしまったけれど…彼女が喜んでくれたなら…いいか)

こうして、私と【ピポ】。二人の生活が始まった。


――――――――――――――――


ピポ「~♪~ららあ~♪ららら♪」

ピポは先程渡したタッチパッドにペンを走らせている。

罪重 已(精神年齢は低め…?見た目は高校生くらいに見えるけど…でも)

已はペンを走らせるピポの表情を見る。

罪重 已「…かわいい」

ピポ「!!」

已が一言呟いた瞬間、ピポは飛び起き攻め寄る。

ピポ「かわいい!かわいいってなに!!!!」

罪重 已「えっ…?!えっと……えと…」

ピポ「かわいいってなにー!ごしゅじん、教えて!」

罪重 已「~~~~~~っ わ、私のことは!!」

已は珍しく大きい声を出す。

罪重 已「…愛称で呼んでもいいですよ、ご主人だと…何か、お硬いので…」

ピポ「…?あいしょう?」

罪重 已「あ…えっと……例えばですけど…のみりん、とか?」

ピポ「のみりん…てなに?」

罪重 已「…」

罪重 已「…好きなように呼んでください。」

ピポ「じゃあのみも!!!」

罪重 已「?はい」

ピポ「おかたいの、なし!」

罪重 已「…?あ、敬語はなしってことですか。わかり…わかったよ。よろしく、ピポ。」

ピポ「うん!!」


――――――――――――――――――――


ピポと過ごし始めて数時間が経過した。

家の中を勝手に好き放題漁ったり、大きな音を立てるのは止めて欲しいが、

それなりに…楽しく過ごせている。

ピポ「お外いこうよ!!!おーーーそーーーーとーーーーー!!!!」

罪重 已「外って言われても……もう深夜だし、明るいほうがいいよ。朝に…」

ピポ「やだーーーーーー!!!!!!!いま!!!」

已はピポのわがままさにうんざりする。

自分と正反対の性格のピポには振り回されてばかりで、疲れを感じる。

罪重 已「…しょうがないな…」

ピポのおねだりしている表情を見ると、断れずにいるのだった。


――――――――――


ご機嫌な様子でステップを踏んでいるピポの後ろ姿を追いながら、

夜の街を歩く。

ポツポツと光を灯す【フロンティシティ】。この場所は…世界有数の【】と

称されている。

周囲にある"防護壁"を超えた先には…危険な世界が広がっている。

崩壊された土地を、"怪物"が徘徊している。

…と、学生の頃に習った程度であまり深くは知らない。

教師は共通して、"私達には、関係ない”というから。

考え事が終わり目の前に集中すると、ピポが何やら上空を見つめ固まっていた。

罪重 已「…ピポ?」

目線の先は…ビルの頂上。

そして、あの場所は………

罪重 已「…ピポ。」

ピポ「~♪」

罪重 已「……」

気の所為…だよね。


――――――――――――――――――


少し街を散歩してから、私達は錆びれてこじんまりとした公園に来ていた。

ベンチに座り、遊具で遊ぶピポを眺める。

…不思議だ。

いくら技術が発展したといって、あんな風に生きた人間を作り出すことは

可能なのか。

自分の思考が今の技術に追いついていない事実に少し気分が落ち込む。

公園の遊具ではしゃいでいるピポを見つめる。

まるでその姿は、無邪気な子供のようで。

ふと時計を見ると、既に朝の時刻になろうとしていた。

罪重 已「ピポ。そろそろ帰……」

ピポ「!」

ピポが振り向いたタイミングと、

「見つけたぞッ!」

声が鳴り響くタイミングは、同時だった。



防護服を身に纏った集団が、公園の入口を塞ぐ。

その中一名、明らかに雰囲気が違う謎の男が前へ出る。

「罪重 已さん、ピポさん。」

ピポ「ゆ?」

男は近づきながら、手の平を広げ画面を映し出す。

「ワタシ、こういう者でして。少し、ご同行を願いたいね~と。」

映し出された画面に目を向ける暇もなく、その集団が醸し出す雰囲気に

圧倒されていた。

男がニヤリと笑う。

従わなくてはいけない。なぜ連れ出されるのかは理解できない。

ただ、これは私の直感で。

罪重 已「ピポッ!!」

キョトンとしていたピポの手を引き、反対方向へ走り出す。


逃げなければ。


―――――――――――――――――――


目の前を認識出来ないまま、風を切り必死に走る。

安易にあの場を抜けられたが、何処まで迫ってきているのかは分からない。

頭が真っ白で何も考えられない。

ただ、ピポの手の感触だけを感じ取る。

方向を転換し、ビルの裏路地にしゃがむ。

罪重 已「…はあっ……はあっ…」

「頑張ったねえ。」

罪重 已「!!!―――――は」

目の前に先程の男が現れる。

已は息が詰まり、声が出せずにいる。

更に先ほどの全力疾走で、身体全体が傷んで動かない。

罪重 已「ぅ゙……」

視界が霞む。少しの隙間から、ピポが捕らえられているのが見える。

罪重 已「……ピ…………ポ」

そのまま、意識が途切れてしまった。


―――――――――――――――――――――


―――――――――――――


――――――


「…最後の一人は捕らえたか?」

「ばっちりですよお~。…ちょっと泡吹いてるけど。」

「は?穏便にやれと言っただろう。だからお前はいつまでも新人呼ばわりされるんだぞ。」

「はは。わかってますよっと…」

「…だがこれで、プロジェクトは進められる。これから更に忙しくなるぞ。"アド"。」

「ハイハイ。仕事押し付けないでくださいよお?"エヴィータ"さん。」



――――to be continued

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