第17話 ことば

月曜日の午前中に見学が決まりました。もう、今回で、四度目です。

そろそろ、緊張もさほど、しなくなりました。でも、やっぱり、面接で落とされたら......という恐怖はあります。履歴書も、書きためたもの、最後の一枚となりました。失敗ばかりしてるんですよね。

下書きを鉛筆でして、ペンでなぞって、という原始的な方法を使っています。ちょっとでも、手書きのほうが印象がいいかな、という、これまたひと昔前の考えかたです。

まあ、手書きのほうが、好きだ、というこだわりもあるのですが。それでも、最後の二行ほどで、ペンでなぞるのを失敗したり、下書きの段階で、字が足りなかったのを、気付かずペンでなぞってしまったり、という、たった一字の失敗で、すべてがパー!というのをなんども繰り返しました!それでも、手書きのものを持っていこうとしてるのです。この健気な気持ちよ!届け!としか、言いようがありません。


面接も、あれが悪かったのかな?これが悪かったのかな?とウジウジ考え、よし!これからは、こうしよう!と試行錯誤の繰り返し。

前にすすんでいるのやら、どうなのやら。ネットの友だちにも、リアルの友だちにも、なんども、励ましてもらいました。けど、まだ、お礼は言わないことにしておきます。

採用されるかどうか、わかりませんからね。


こんど面接を受けるであろうところも、サービス付き高齢者住宅といって、比較的、自立度の高い方々が住んでいるところです。

よっぽど、最初のデイケアで、懲りたんでしょうね。もう、全介助とか、排泄介助とかするのに、嫌気がさしてるんです。けど、介護系の仕事がしたいところは、変化がない。

お年寄りとは、仲良くしたいんですよね。


あの、最初の介護施設でいじめられて、「あんた死んだらどう?」(そのころは、パワハラとか、あまり重視されてなかった)と、言われたとき、利用者のかたが、

「死なんといてやあ   寂しいしなあ」と助けてくれた一言が、忘れられないんです。ほんとにそのとき、

「よし、死ぬのだけはやめよう!」

と思えたんです!


お年寄りというのは、そういう、すごくやさしいことを言ってくださるかたが、仲にはいるんです。

仲間の若いやつらより、お年寄りのほうが、よっぽど、人間できています。


もう一度、あんなやさしいかたたちと、コミュニケーションをとれるような仕事がしたい!という思いが、まだ、残っていて、介護系。

目指そうとしています。



そう言えば、お母さんにも、「死なんといてなあ  寂しいしなあ」ってことば、言ったことなかったな~。

言ってたら、もうちょっと、がんばってくれたかな~?

安心してくれたかな~?なんて、考えながら、自分のなかからは、そんなことぱ、出てこないんだな~、と実感しています。


お父さんに、言ってみようかな~。「死なんといてなあ   寂しいしなあ」



やめだ!余計に悲しくなる。



言うのは、きっと、ぼくが、年取ってから、そういう「死んだらどう?」なんて言われた、若いひとが、目の前にいたときだな。そのときは、言ってあげよう。


そのことばを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る