第18話 セミ
八月一日、介護の面接、がんばってきました。もうこれ以上、いまの自分の実力としては出しきれない、というほど、がんばってきました。
なので、今回、不採用ならば、ちょっと、介護業界に不信感を抱き、嫌気がさすと思います。
新しい職種は、まだ見つかっていませんが、多分、別の仕事に流れていくだろうと思います。
だいたい、介護って、そんなに素晴らしい!!って仕事でもないのに、ひとを選びすぎだと思います。
ひとが、一生懸命、誠実に質問に応え、真面目に質問を受け止め、考えて答えてる、というのに、あれ以上のこと!なにが気に入らないのだろうか、という感じです。そんな誠実な、一人の人間を門前払いするような場所は、こっちから、願い下げです。もう、必要ありません。
ほんとうにそこが、そんなに素晴らしい職場なのか、疑わしいところです。
面接は、駅の近くの会場まで足を運びました。夏真っ盛りという感じです。
セミが岩に染み入っていたのか、ミンミン、ミンミン、意味もわからず、鳴いていました。ぼくは、ハンカチタオルを、前の日に百均で買い、一枚持ち、会場まで出かけて行きます。
太陽が必要以上に照りつけ、スーツ姿で、自販機でお茶を買い、流れる汗をタオルでぬぐって、とにかく、歩きました。
会場に着き、涼しかったのですが、スーツでかく汗のほうが心配でした。
熱中症もこわかったですが、なんてったって、いっちょうらのスーツです。こんなに汗をかいたら、また、次に着るとき、クリーニングに出さなければいけません。そんなことばかり、気にしてました。
四階の待ち合わせの階まで、エレベーターで登り、係のひとらしきおばちゃんが、立ってました。
「デイサービスの面接のかたでしょうか?」
髪の毛を短く切ったおばちゃんが、たずねてきます。このひとも、面接にたずさわるひとなんだろうか。一体、どういう関係があるひとなんだろ?
「はい。よろしく、お願いいたします」「履歴書お願いいたします」
かばんから、履歴書を差し出すと
「少々、お待ちください」
ぼくは、椅子に座り、また、汗をぬぐいます。時計は、面接開始、五分前。ちょうどいいころです。そこで待つこと、五分。中肉中背のメガネをかけた男性がやってきて、
「こちらへどうぞ」
小さい事務室の片隅で、面接ははじまりました。
後の事は、最初に言ったとおり、やるだけのことはやりました。面接会場を出て、ほっとしました。
朝から、面接のことを考えすぎて、優うつな気分だったんです。それが、パッ!と解放されたような。
目の前の視界が広がりました!バスに乗り、自宅まで帰り、あち~、あち~とエアコンをつけ、扇風機をつけ。過度の期待は、しないでおこうと心に誓ってました。落とされるときは、落とされる。
面接の感触は、こっちの思いとは裏腹に、向こうは、どう取っているのかわかりません。こっちは、良かったと思っていても、いままで、何度落とされてきたことか。
夕飯の支度をしようと思いましたが、なにを食べようか思い着きません。
一日、千円で食費を押さえることにしてましたが、えーい、その日はいいや!千円越えましたが、らーめんを食べに行きました。
その日は、母の命日でした。
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