第16話 友よ

同級生の友だちが、母親の介護に奮闘していると聞きました。

ぼくの場合、周りのひとより、少し早くやってきた親の介護問題。そりゃ、ぼくだって、介護の最中、施設に行ってくれないかなー、って何度も考えましたよー。ぼくだって、聖人君子じゃないんですからー。

介護の最中は、まったく、ひとも寄り付かなくなりますしねー。

それでも、母のお世話をしたのは、やはり、いままでの恩返しがしたかったからです。きっと、同級生の友だちも、なんらかの、ぼくと同じような気持ちなんでしょう。



何度、逃げ出したくなったことか。

あんなに強かった母の、日に日に弱ってく姿を目の当たりにするんですから。

まさか!もう、頼むし、お母ちゃん、これ以上、弱らんといて!とは言えないし。

黙って、悲しむだけです。


あの悲しみときたら。毎日、その悲しみが続くんです。

とにかく、逃げ出したかった。



友よ。

おまえも、いま、味わっているんだな。あの悲しみを。ぼくも、悲しかった。ときには、母の前で、号泣することもあった。

でも、友よ。

母は、なんらかのかたちで、おまえに、人生の答えを与えてくれる。それが、母親からの贈り物なのだ。

友よ。泣くな。いや。泣いてもいいが、放っといて逃げ出すことだけは、やめろ。母も、いま、悲しんでいる。

そばにいてあげられるのは、おまえだけだ。

ただ、もう、どうなっても無理だ、と思ったときは、あきらめてもいい。ひとには、身の丈というものがある。

それを越えてはだめなんだ。



ただ、そのときが来るまで、友よ。



ただ、戦い抜いてくれ。



涙の雨は、虹をつくるから。



友よ。

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