第14話 鍋

兄のうちへ、鍋に呼ばれました。

美味しかったです。

ホソっていうのかな?兄は、おまえ、こんなん、食べたことないやろ!と自慢げに言ってました。

ホルモンの肉らしいですね!ぼくも、食べたのはじめてでして、ほふ、ほふ、と言いながら、食べてました。


鍋の横では、でっかいテレビがついていて「おまえ、テレビ見ないから、こいつ誰か知らんやろ」 

「知らん」

と、そんな会話ばっかしてました。


奥さんが、麺を持ってきて、食べて、食べて!と言います。兄の奥さんは、どんどん、食べ物を運んでくるんですよね。

兄は、よく、あんな細身の体型を保ててると思います。

ぼくやったら、あの奥さんだと、ぶくぶく、ぶくぶく、幸せ太りしていたでしょう。


最後、食べ終わり、兄に食事を招待されると、いつも、どのタイミングで帰ろうか迷ってしまうんです。

早過ぎても、なんや、もう帰るんか!と文句つけられるし、遅くなっても、後で、おまえ、早よ帰れよ、と文句つけられるし。どのタイミングが一番、後味良く、帰れるのかな~と思います。


読みかけの小説を取り出しました。鍋が終わり、兄は、ソファで、だらーっと寝転んで、テレビを見ています。

小説の話がだんだん、おもしろくなってきました。なんででしょう。

小説って、自分の家じゃ集中できないんです。バスに乗ってるときや、喫茶店にいるときのほうが、集中できるんですよね。


奥さんが、「わたし、寝てくるわー」と言って、ベッドへ向かいました。


兄はテレビを。ぼくは、小説に集中しています。


小説が一段落、終わりました。

「お兄ちゃん、そろそろ、帰るわ」

と言うと

「おう、早よ帰れ!」

と言われました。どうやら、また、帰るタイミングを間違えたようです。


自宅へ帰ってから、お兄ちゃん、今日は美味しかった!とLINEを送っておきます。


次の日、兄に会うと、案の定、怒られました。

「おまえ、これから、もっと早よ帰れよ」と。

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