第7話 梅雨入り

いま父と散歩に出かけてる間に、雨が振り出し、うおー!ぼくは、なんで、こんなに雨男なんだー!と急いで、帰ってきたところである。

そう叫んでいる途中、父は、ハハハハと、車イスに乗りながら笑ってた。

ぼくは、できるだけ、雨の当たらない、木のしげってる道を通って、日差しも照ってないのに、汗びっしょりになって。

施設に帰ってくると、缶コーヒーをひとまず買って、いま、庭の見えるテラスでゆっくりしている。

施設のとなりは、幼稚園になっていて、運動場が見える。そこから吹いてくる風が気持ちいい。

「お父さん!ええ風、吹いてるなー」

「ハハハハ」

と、ぼくが危険をいち早く感じ、一目散に帰ってきたのも知らずに、のんきなもんだ。

ただ、笑ってる。

まあね。梅雨入りもしたしね。雨が降るのは当たり前だ。その危険を承知で、ぼくも、散歩に出た。

いや~!でも、父が雨にびしょ濡れになったら、大変だろうなあ。父は、風邪ひくし、施設のひとには、散歩するのを警戒させるだろうし。濡れずに帰ってきて、ひとまず良かった!


いまから、父と小さな遊びをする。

散歩は、景色を眺めてもらうだけで時間は過ぎてくが、父と施設のなかで小さな遊びをするのは難しい。

ぼくが、スマホで文章をうってたら、父は、天井を向いたり、どこか眺めたりして過ごしている。

父も、すっかり、静かな時間が好きになった。

あんなに、若いころ、元気だった父が。

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