第13話(?/?16:30)

「お待ちしておりました」


 重厚な机の前で、黒髪の女性が頭を下げる。


「不肖ながらこの国を治めております。女皇マーガレットと申します。縮めてリタとお呼びください」


 校長先生の応接セットのような、向い合せのソファに座る。横でミナが居心地悪そうにしていた。


「早速ですが、ひとつ訊きたいことがあります」

「……」

「地球に帰りたいですか?」

「それは……もちろんです」

「そうですか」


 本日は皇宮でお過ごしください、と女皇様が立ち上がった。


「もういいんですか」


 思わず訊いてしまった。


「わたくしからは何も。わたくしはこの国で生まれ育った者ですから、地球についてとやかく言うことはできません。地球からの漂泊者については、わたくしの姪――皇女に一任しております。ただ、この国での最高権力者はわたくしですので、彼女の決断にわたくしが許可を出す形になります。そのため、幾度かわたくしから質問をする事になりますが、ご了承ください」

「漂泊者って、何人もいるんですか。わたし以外にも」

「二ヶ月に一人といった程度ですか。ちょくちょくいらっしゃいます」


 やはり、こういった事を言いふらさないための取り決めがあるのだろう。ニュースに異世界への漂泊者が映ったことはない。もしいたら日本中、ひいては世界中が大騒ぎになるはずだ。


「ほぼ全ての方が、この国に残ることを選択されますから。ニュースにはならないんです」

「それは…なぜ?」


 社長の座っていそうな、キャスター付きの椅子を回してわたしたちに向き直った女皇様が、わたしを見つめる。


「この世界のほうが、日本よりも居心地がいいから、と」

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