第11話(?/?13:38)
人が死んだと聞いてから、全身が錘で床に押し付けられたようだ。生命の話のせいで、無理やりな現実感がわたしを縛っている。
「そろそろ来ますよ」
わたしは、駅にいた。
勝手に、異世界などというものでは文明が進んでいなくて、馬車かはたまた本物の馬に乗らされて行くんだろうと思っていたから、皇都に行くのには電車(ここでは魔車というらしい)に乗っていくと聞いて驚いた。
「時々力がうまく働かなくなって、遅れるのが欠点ですが、概ねいい交通機関ですよ」
魔力には電力ほどの安定した供給と力のバランスがないのだという。
「そもそも魔力っていうのが、人の血の中にある『魔術を使う力の素』の濃度のことだからね。人から血をもらって運行している今の状態では、安定しないのも当たり前だよ」
駅員さんが遠くに向かって手を振る。運転手への合図がこれらしい。ずいぶんと旧式なものだ。
「サエみたいな地球の人はその濃度がすごく低いらしいよ」
「だから、魔術が使えないそうです」
「魔術って、どんなふうに使うんですか?」
「え? どんな風って…」
2人が困惑した様子を見せる。
「私たちにはわからないかな」
「それこそ皇女様に聞くと良いと思います。私たちは普段から使い慣れていて、仕組みとかそういうのはどうも…」
呼吸の仕方が説明しづらいようなものです、と言われた。一回習得すると、習得していることが自然になるようなこと、だという。
[2番ホーム、皇都ベリーズストーム行快速、間もなく到着です。十分に線路から離れてお待ち下さい]
風がわたしのスカート(一応正装なので制服を着ていた)を巻き上げて、タイヤのついた立方体がホームに滑り込んでくる。
後ろで手を振る村長さんへ頭を下げて、列車へ乗り込んだ。冷たい空気が頬に心地良い。
「エアコン、効いてる」
「エアコン?」
手近な席に座ってそう呟くと、ミナが怪訝な顔をした。
「これは多分、空気を魔法で冷やしてるだけだと思う」
「その機械をエアコンっていうんですか?」
「地球では、そう」
魔術には、環境への悪影響とかなさそうだなー。本当、魔法っていうのは夢みたいな技術だ。地球でも使えれば、今地球の人々が迷って居るほとんどのことが解決するんじゃあないだろうか。そういうことも、皇女様に訊いてみようと心を決める。
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