第10話(?/?10:25)
それからわたしがたどった道は、皇女様たちがたどったものとほぼ同じだった。
まず初めに、村長さんへの改まっての挨拶。なんでも地球から来た人間は「賓客」として特に丁重にもてなされるらしく、終始村長さんが平身低頭していてこっちはすこし気まずいくらいだった。
それから、市場の見学。わたしのお金でもないのに、見たこともないものをたくさん食べさせてもらった。まるでお祭り気分で楽しかった。
学校の授業も体験させてもらった。サヨたちの歳はわたしよりも一つ上だけれども、進度はわたしよりも二、三年遅かった。小学六年生くらいの内容だ。先生たちがユニークでとてもインタレスティングな授業だった。
そうして、わたしたちは今、例の遺跡を訪ねている。
「懐かしいね。村の史跡だったのに、ぐっちゃぐちゃ」
「それはそれでそのうち価値が出ると思うけど」
おそらく石造りの建物だったのだろう。まるで上から叩き割られたみたいに天井が裂けている。
「ここで何が?」
「簡単に言うと、戦争」
そう言われて、もう一度上を見上げる。
「それ、天井じゃなくって床なの。もともとここは、ストーンサークルみたいな感じだったんだよ」
「下から持ち上げられたってこと?」
「そう。下で大きな爆発? が起きて、下から」
地下に空間があったことは誰も知らなかったのだという。それが突然、夜中に隆起したというのだから恐れ入る。
「まだあるんじゃないかな。布切れとか、鎌の柄とか」
「鎌?」
「そこで戦った相手、鎌使いだったんだ」
鎌なんて、死神の持っているものしか見たことがない。
「死神みたいな人だった」
「人間と、戦ったんだ」
勝手に、魔物だとかモンスターだとかと戦ったんだと思っていた。お話の中の異世界では、悪いモンスターをやっつけるのが主人公の仕事だから、皇女様もその一人なんだと思っていた。
「そうだね。亡くなったって聞いたよ」
死んだって一言は、わたしには重すぎる。皇女様が殺したんじゃないだろうと思いつつ、その言葉の強さに何も返せなくなっていた。
「先月、だっけ。傷が病気につながって、ね。
「皇女様には伝えないんだよね」
「あの人、責任感じちゃうでしょう。そんなこと言ったら。ただでさえ背負い過ぎなのに」
「そうだね」
戦争って、戦いって、異世界って、泥臭いものだ。巷で囁かれているあんな華々しい転生も転移もきっとありゃしない。強い力を持っていたとしても、そんなの人の役になんて立ちゃしない。
所詮人が持つ力なんて、人を殺すための術だ。今の人達は、それがわかっちゃいないんだろうな。
「もう、行きましょうか。昔の遺跡なんて、面白くない」
「行こうか。昔話は、会ったときにすればいいもんね」
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