第6話(?)

 村長さんは、ほんとに「村長さん」という感じの人だった。小さくてよぼよぼで、ぎゅっと握りつぶせてしまいそう。

「サエどの、でしたか」

「はい」

「この国では、異郷からの旅人は丁重にもてなす決まりになっております」

 柔和で穏やかな声が耳に心地良い。横に座っていたサヨさんが足を組み替えた。

「しかし、あなたはあくまで旅人の身。この国にとどまるにも、あなたの国に戻るにも、どちらにしても皇府の許可が必要です。手続きがどれほどかかるかはわかりませんが、おそらく二週間経たないうちに皇府から召集が来ると思われます。それまでのしばしの間、この村への滞在をお願いしたく存じ上げます」

 まるでRPGみたいだ。こんな村長さんと、ぽんぽん進んでいく話と。無力なわたしとしては、フィールドにモンスターが出ない世界であることを祈るばかり。

「まあ緊張しないで、旅行気分でいてよ! 皇府には私たちもついてくしね」

 なんと、ミナさんとサヨさんは皇府までついてきてくれるというのだ。なんでも皇女さまと会ったことがあり、今回は彼女に会いに行くのだとか。

「ありがとうございます」

「硬くならない!タメ口でいいんだって!」

「わたし、上級生にはちょっと」

「一歳年上なだけだよ?」

「ミナ。お客人を困らせるのはおやめ」

 村長さんが窘めて、ミナさんは膨れた顔で椅子に座り直した。

「申し訳ありません。この通り、生意気盛りの孫娘でして」

 村長さんが大人にするみたいに頭を下げる。

「全然! わたしも礼儀作法なんて全然わかりませんし」

「ありがとうございます」

 再び頭を下げて、村長さんは窓の向こうを指し示した。

「あちらの大きな建物が、宿泊施設になります。十二人用ですので、少し大きいですが」

「私たちも泊まるつもりです」

 サヨさんがここに来て初めて口を開いた。

「ありがとうございます」

「当然のことです。この村でサエさんと歳が一番近いのは私たちですから」

 上品に笑う姿が麗しい。

「じゃあ、おじいちゃん。もう行ってもいい? 私サエにあそこ紹介したい」

「構わないよ」

「じゃ、行こ! サエ!」

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