第5話 (?)

 えっ…と。情報整理。

 まず、わたしはドアを開けたら異世界(仮)に来てしまった。

 で、ドアはあるけどその向こうが無くって帰れそうにない。

 あ、詰んだ。


「おーい。大丈夫ー?」


 ミナさんがわたしの眼の前で手を振っていた。


「あ、う」


 馬鹿みたいな声が出た。


「どこから来たの?」

「日本…地球の、日本から…」


 地球と言ったあと、ミナさんが大きく目を見開いた。


「地球ううっ!?」

「え…」


 薄々そんな感じはしていたけど、ここが地球じゃないと知って、想像より打ちのめされた自分がいる。


「うっそでしょー」


 嘘だ、と口で言いながらも、ミナさんは納得したようだった。


「道理でねー。黒い髪に黒い目だもんな」

「わたし、帰れますか?」


 不安になって訊くと、


「もちろん! ……ちょっと時間はかかると思うけど」


 それを聞いて安心した。時間がかかるってなんだ、とも思ったけれど。

 もしかしてわたし、日本では行方不明? 冗談きついって。


「とりあえず村長さんと相談かな~。立てる?」


 わたしがずっと座りっぱだったのを気にしてくれたのか、ミナさんが手を差し伸べてくれる。その手にすがって立ち上がった。


「サヨ!」


 ミナさんに連れられて廊下らしいところを歩いていく。彼女いわく、ここは日本の学校と同じ施設らしい。


「どうしたの? その子は?」


 ミナさんに呼ばれて振り返ったのは、紺色の髪に美しい水色の瞳の超絶美少女だった。モデルスカウトが殺到すること間違いなしだ。


「地球から来たんだって」

「は?」


 そのサヨさんが顔をしかめた。


「冗談で言ってる?」

「大マジ!」

「嘘でしょ。皇女様たちと同じってこと?」

「あー、そうかも」

「大事じゃない」


 面倒ごとの火種を作ってしまったようで、申し訳なくって肩が縮まった。


「ああごめんなさい、別に迷惑なんかじゃないですから」


 顔を上げると、サヨさんが微笑んでいた。何と言うかもう、浄化されそうだ。

 近くで見ると、背もそこそこ高いのがわかる。ロングヘアーのなんと美しいこと。乾かすのが面倒だなんて言って、長いのか短いのか微妙な長さを保っているわたしとしては、正直面目ない。


「とりあえず村長さんのところに一緒に行きましょう。きっと良いようにしてくれます」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る