第27話 新人女神が、把握していない仕組み

 それは遙か昔。

 ダンジョンシステムを使用した、ある異世界。

 そこで発展をした生物が、魔素に目をつけた。

 それは、無尽蔵のクリーンエネルギー。


 そう、彼らは生活基盤に、ダンジョンを組み込んだ。

 そして人々は発展をして、神は、システムからの警報に悩む事になる。


 魔素は、神力を変換をして創っている。

 世界を、循環をして利用されるのは良い。

 だが彼らは、膨大な量をストックし始めた。

 すると、世を流れる総量が減ってしまう。


 すると、当然だが、ダンジョンやモンスター。

 世界の運用に対して、異常が発生。


 しかなく、神は貯留禁止のシステムを組み込んだ。

 ある程度以上一部にたまると、強いモンスターが湧き始め、設備をおそう。その量によって強さはうなぎ登りに上昇をする。

 問題は、貯留タンクを破壊しても、出来てしまったモンスターは消え無い事。

 大騒ぎは残る。


「だがまあ、警告としては、衝撃的な方が記憶に残るだろう」

 その神はそう言って、それをとした。


 その仕組みごと、女神はパクった。

 そう何も考えず……


 龍脈を利用した、バランスシステムも含めて。

 ダンジョンコアが破壊されると、達成者に褒美が与えられ、そのダンジョンは十年ほどおとなしくなり、クリスタルを復活をさせる。

 そのかわり、他のダンジョンで活性が上がり、星全体では魔素の供給を安定させる。


 そのため、どんどんと強くなっていくダンジョンは、すべての攻略を行うのが、事実上不可能となる。

 飴と鞭というのか、知性体が強くなりすぎないための制限。


 ただ欠点はある。すべてのダンジョンを、同時攻略すること。

 その可能性があるため、極地方と深海に通常は休眠状態の隠しダンジョンがあったりする。

 そう発動すれば、全球凍結まで起こる事がある。


 いやはや、管理者として、生物が持つ好奇心。

 その心を折るための苦心が、世界にはちりばめられている。

 神と悪魔は表裏一体。

 ただ願うは、苦労をさせて、よき魂を輪廻させる事。

 そうすれば、神としての階位が上がる。

 そう、限界を見極めながら、生物に苦労させるのが、神の望みなのだ。



 それは、まあ良いとして、そんな物騒な機能を、この世界でもそっくり使っている。

 エメリヤンが試したダンジョンは、水のダンジョン。

 そう現在の、ドラゴンダンジョン。

 魔素を使い、ダンジョンの口にシールドを張った。

 それは、予想よりも上手く行った。


 だが、妙な振動に気が付いた人々。

 見ると、シールドの内側でドラゴン達が湧いていた。

 ダンジョンの防衛種は、たまった魔素を感知して破壊をする。

 ダンジョン出口まであふれた彼らは、シールドを割り、世界中に散らばってしまった。こうして、ダンジョンの中が、少し改変された。


 水のダンジョンは、もっと穏やかだったのに、荒れ果て危険度が上がってしまった。

 あわてて、仲間は倒しに入ったのだが、そう世界中のダンジョンが、危険度として一ランク上がった。

 何処にも、その特性に特化をしたドラゴン達が、住み着いたようだしまあ……


「新しい事には、事故がつきものさ。塞ぐと危険が増すと、後世に残そう」

「それは重要だが、このままにするのか?」

「浅い層は、何とかしたし、外に出た野良のドラゴンは倒した。良いでしょ」

「私も疲れちゃった」

「私も……」

「仕方が無い、後世の人達が、困ったら…… 自分たちで、なんとか対応をするだろ」

 そんないい加減な乗りで、終わりにした……


「そうだな、あれは不幸な事故じゃった。仕方が無い……」

 そう言って、静かに首を振るシン。


 横では、マッテイスが呆然としている。

 今では伝説となっている人々の、失敗話。

 それも……

「後世に、つけを回した?」

「いやまあ、出来る対処はしたし。修行をするには相手が強い方が良いじゃろ。あっそうそう。それはおいといて、ダンジョンは塞いじゃいかん。警告をその、イングヴァル帝国とやらに、通知をしてくれ」

 笑ってごまかすシン。


「連絡はしますが、他に重要なミスはありませんか?」

 聞かれた瞬間、シンは顔を背ける。

「やった事を、記憶があるうちに書面に残してください。絶対ですよ」

 そう言い残して、マッテイスは、走っていった。


「人には知って良いものと、悪い物がある。深淵をのぞかば、その闇は人を蝕む」

 ぼそっと言ったシンの言葉。

 直訳すれば、『知らない方が、幸せなのに……』である。

 一体、千年以上前、彼らは何をしたのか……



 そんな頃、新たな技術で事故は起こるもの。

 イングヴァル帝国では、起動した装置が切れなくなり焦っていた。

「止まらぬか?」

「申し訳ありません」

 先ほどの表情とは変わり、焦った様子を見せる。魔導技師レビー=ラーヴァナ。


「流通が止まっても、すぐには困らんじゃろ。考えによっては簡単に止まらぬのは、安心材料にもなる」

「はっ。ありがたきお言葉。恐悦至極にございます」

 彼はそう言って、皇帝に対して、頭を下げて見送る。



 すぐに何とかなるだろうと思ったが、魔素の導入管すら、変質をしたのか破壊が出来なかった。

 そう高濃度の魔素は、物や生物を変質させる。

 魔導システムの、内側は聖魔法でコートをしなければならなかった。


 副産物で、ミスリルやオリハルコンといった物も創られるが、この世界では加工が出来ない物質として、知られていた。


 炉の中に魔素を、魔力と化して投入しながら鍛えれば、加工できるのだが、それを知っている者は、今は居ない。

 シンも知らなかったが、リッチから知識を貰ったので知ってしまった。


 そして閉空間と、ダンジョンから噴き出す魔素。

 星への魔素供給能力として優秀であり、シールド内部はあっという間に濃度が上がっていく。

 それは、魔素が、動物たちがモンスター化をした様に、帝都の人々を変質させていく。

 そして、シールド内に降りそそぐ聖魔法が微妙なバランスで変化を抑制する。急激な変化で、モンスター化をするのではなく。緩やかに魔素となじみ魔人化という現象を起こした。

 人々は、感受性の高い者から順に、変わっていく……

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