4話





すでに健太と京子の緊張の壁がなくなっていた。


美咲との馴れ初めは?

…お休みの日には何してるの?


お父さん、本当は男の子が欲しくてね…



最近、わたし韓国ドラマにハマってて健太さもそういうの観たりしない?



美咲は、改めて母親のコミュニケーション能力の高さに驚かせれていた。




時計の針が14時を周ろとしている時



ガチャッ

玄関の方では、扉を開く音が聞こえた。



「お父さんじゃない?」

美咲は、母に聞く。


「そうかも」

玄関の方に行くと勲が立っていた。


「おかえりなさい。もう美咲たち来てるわよ」

「そうか、一緒にいるのか?」


“一緒にいるのか?”勲が分かっていてもまだ娘が紹介する人の事を受け入れられないでいる事が分かった。


勲がリビングに入ると、そこに“美咲たち”がいた。



健太は、

リビングに入ってきた勲にこのままでは、失礼と身なりやただずまいを整える。


「挨拶が遅れました。

初めまして、木下健太と申します。不在の中、お邪魔してすみません」


「いえいえ、大丈夫です」


美咲と京子は、変に畏まった勲に笑い堪えていた。


「早速ですが、先ほどお母さまの方には、お伝えした事を改めて言わせてください」


勲は、いよいよかと拳を握りしめて緊張感を高めた。


「娘さんを僕にください」


きたか


ついにこの日が


勲は、自分の娘がここまで来たのが感慨深い気持ちで目の前を見た。



すると、横で今にも何か言いたそうな表情を浮かべる京子と目が合った。



美咲は、母親が先ほどの事を言おうとしての察したのか言葉を制した。


「お母さん、待って、待って!それは、わたしから言わせて!」

「そうよね!」

照れたような笑顔を浮かべ京子は、娘の出番を奪うところだと反省していた。


勲は、2人がまだ何か隠してるのかた訝しんだ。


「お父さん、もう一つね言わないといけない事があるの。実はね…わたしのお腹に赤ちゃんがいるの」

「赤ちゃん…?美咲、お前妊娠したのか?」


「そうよ、美咲と健太さんの間に子供がいて…」



……


「私たちの孫が出来るのよ」


やっと思いっきり話せると解放された京子は、喜びの表情を浮かべる。



美咲の結婚に

美咲には、子供も出来て


これほどまでに幸せな事があっていいのかと喜びの感情を抑える事が出来ないでいた。



「健太くんって言ったかな。

子供って順番が違うんじゃないか?」


勲の反応は、違っていた。

健太を問い詰めるように質問した。


「はい。そのことに関しては重々承知しております。」


「結婚の挨拶は、まだ分かる。けど、いきなり子供って。そんなに責任負う事出来るのかね。2人だけならまだしも、もう1人という事は、今までよりももっと大変になるんだぞ。

わたしは、きちんと相手の親御さんに挨拶してからだったぞ」


「はい、そのとおりです」


「お父さん、そんなに責めなくても」

「美咲も自分の将来の事とかをちゃんと考えたのか?勢いでやっていけるほど甘くないぞ」


「何よそれ?わたしだってもう子供じゃないんだから」

「そうよ、美咲も立派に社会人として働いている訳だし」

京子は、美咲を庇うように割って入る。



「社会人ってまだ3年働いただけじゃないか。これからの方がもっと大変になってくるだろ」

勲は、自分の娘がこのままの状態でやっていけるのか心配で堪らなかった。



「もういいよ。そんな事、言われなくてもわたしだってちゃんと色々と考えてるし。それに止めても結婚式もやるし、子供も産む。でも、式には、お父さんは呼ばないから」


ガタンッ

興奮した美咲が机を叩いた。


箸が落ちる。



「ちょっと、美咲。それは言い過ぎだろ」

あまりにも感情が昂っている美咲を健太が制した。


「美咲、子供の事もあるんだから」


「好きにしなさい。そういう事ならもうお前はわたしの娘でも何でもないという事だな」


「それでいい。もういいよ。帰る」


「ちょっと、美咲…待って」

京子は、涙を流しながら家を後にする娘を止めた。


「お母さん、もう大丈夫だから。」

美咲は、その言葉を最後に玄関の扉を開くと実家を後にした。




居間では、興奮をした表情を浮かべる勲がいた。



「お父さん、さっきのは言い過ぎです。わたしたちの大事な娘のこんな日に」


京子が思っていたものとは、違った結果にショックを受けていた。



「大事な娘だからこそだろ。お前も自分の娘が変な男に騙されて泣く姿を見たいのか?」


「そんな訳ないじゃないの!変な男って、それに健太さんは、そんな人じゃありません!」


「お前に何が分かるだ!もういい、ちょっと外にでてくる」


「好きにしたらいいじゃない」

勲は、靴を履き再び家を出た。



先ほどまでのいた場所に2人は、いない。


机の上には、食べ終わった皿が残されたままだった。


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